#06 ハウのお馬鹿

 対して、


「ありがと。センキューッ」


 投げキッスな小粋なハウ。


 お、俺ッちにはホワイ姉ぇさんしかいねぇ。いねぇんだ。ガキはお呼びじゃねぇ。


 いやいや、ハウの元気っ子な行動が裏目ってホワイの身がヤバい事になってるぞ。


 本当に大丈夫か、色々と。


「さてと」


 と視線を僕に移すハウ嬢。


「お許しもでたし、じゃ、しょうがないから、今からケンダマンが感じた疑問に応えるよ。ハウちゃんがさ。もちろんヒント料なんてセコい事は言わない。大サービス」


 出血はしないけど。アハ。


 というか、お前はホワイじゃない。ハウだ。心を読むのが苦手じゃなかったのか?


 心を読むのが苦手なクセに僕がなにも言っていないのに僕の疑問が分かるのかよ。


 と思ってしまうのは、やっぱり悔し紛れなんだろうな。


 だって分かっているもの。


 ハウの隣で佇むホワイから耳打ちされていた事を……。


「とのかく。あ、間違えた」


 ハウは自分が僕の心を読んだ体で話そうとして噛んだ。


「テヘヘ」


 照れ隠しで笑いつつ赤い舌をちろっと口の端から出す。


 間違いない。やっぱり僕が何に気づいたのかをホワイから聞いている。その上で聞いた事がバレてなくて自分で読んだとふんぞり返っている。まあ、ハウらしいお馬鹿な行為で微笑ましくもあるが。どちらにしろ、とにかく話を前に進めろ。うむっ。


「さてと、ケンダマン、君は、今、こう思ったね。フム」


 とフーの真似をしながらも、ようやく話が前へと進む。


 しかしながらハウという少女は、あまりに無駄なリアクションが多いから(※誠に遺憾ながら、これも、ある意味でデフォだから始末に困る)、ここから先は彼女が言った事の要点だけをかいつまんで話しておこうか。つまり、そうなのだ。うむっ。


 僕は、秀也から聞き出した新事実が気になったわけだ。


 それは、


 一正が生死の境をさ迷っただとか、奈緒子が死んだ夜、直前で秀也が彼女に電話をかけていた事だとかだ。とはいえど、その新事実自体に問題があるわけではない。これを聞き出した人間が野々村秀也だったという事に疑問を覚えてしまったのだ。


 つまり、


 午前中の聞き込みでも聞けた事なのに、なぜに午前中と午後の二回に分けたのか?


 分ける必要性があったのかという疑問だ。


 無論、捜査を合理的に進めるという観点で考えれば二回に分けるよりも一回の聞き込みで聞けるところまで聞いてしまった方が時間的にも労力的にも無駄がない。それなのに午前中にも聞けた事を午後に回してしまい聞いてなかった事の不可思議さ。


 そこに意味があるのかと疑問を覚えてしまったわけだ。


「……だよね。秀也の所に二回も聞き込みに来た事に不思議さを感じたんだよね?」


「ああッ。そうだな。無駄が多くないか?」


 まあ、ハウのリアクションや行動にも無駄が多いが、それ以上に無駄な気がする。


 と唐突、僕の鼻頭を人差し指の指先でピーンと軽く弾いてから疑問に応えるハウ。


「ふふふ」


 痛ぇっ。


 いや、痛くはないけど、痛えぞ、コラッ!


「実は、その不思議さにハウちゃんお得意のトリックが仕組まれてるんよ。だから、今、トリック担当のあたしが答えているわけ。機は熟した。タネ明かしだってわけ」


 トリックだと。そんなものが在ったのか?


 どこに?


 ケンダマン、まあまあ、落ち着け、どうどう。どうッ!


 慌てんなや、深呼吸だぞ。

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