#05 ハウだぞ?
そののちホワイの茶色で彩られ愁いを帯びた視線が僕に突き刺さる。
「ふふふ」
急かしているようにも感じる濡れそぼったそれは僕の体に絡みつく。
「フフフ」
まるで蠱惑的な毒蛇が赤い舌を微かに出し入れして首筋に噛みつく機会をねらっているようにも思える。毒蛇の毒は甘く切ない。目の前がくらくらと歪んで、ごく自然に虎の子の依頼料が入った袋へと手を突っ込ませる。誘われるよう。誘惑され。
「フフッ」
のろのとした所作でヒント料である5万円を取り出す。
5万円をホワイへと差し出して夢うつつの僕は虚ろな目つきで笑む。
「これで」
「はい。……確かにヒント料の5万円を受け取りました」
と、現金を受け取ったホワイは、その足で、それをフーへと手渡す。
「フムッ」
とだけ答え、バトンタッチされたフーは5万円を受け取り、微笑む。
とにかく、これでヒントが8回、総計70万円を支払った事になる。
ヒントの残り回数は2回。
どうにも心細いが、それでも為すしかなく、依頼料を預けてくれた奈緒子の父親の為にも事件を解決させるしかない。改めて推理ゲームに負けてはならないと心を新たに、再度、気合いを入れ直した。と……、同時に、また新たな疑問が湧いてくる。
そうだ。推理ゲームでのヒントの事を考えたからこそ。
僕が疑問に思ったのが早いかのタイミングでホワイがハウに耳打ち。
ごにょ。
ごにょ。
ごにょ。
オマケにごにょっとなと。
「ああ、そう。気づいちゃったみたいだね。今更な事に」
とハウがHowと白文字で綴られた帽子のつばを触る。
くいっと音を立てて顔をつばに埋め顔を隠してしまう。
「まあ、でも、それも仕方がないか。秀也の出番が、もう少し先になっちゃうけど」
と、つばの端から見え隠れする藍色のビー玉のような瞳を妖しく妖艶に光らせる。
その視線の先には、秀也。
また別の意味での美女に唐突にも話を振られた秀也は、どぎまぎしてから答える。
「まあ、気にすんな。もう慣れた。待つよ。さしずめ今の俺ッちは地蔵ってとこだ」
それに、もう少しだけ時間もあっからよ。気にすんな。
と、そっぽを向く。照れ隠しな気もするが、マジでか?
ハウにか? ハウだぞッ?
というか、秀也と呼び捨てにされているにも拘わらず、敢えて触れないのは……、
やっぱり、秀也は、ハウも気に入ったのかもしれない。
しかし、
お前みたいなガキんちょに興味はねぇよ。俺ッちが興味があるのはホワイ姉ぇさんだけだ、とでも言い出しそうなイキオイでハウの絡みつく視線を躱している。そうして、目を閉じて、その手に在る黒地に黄色い日の丸が描かれた扇子を派手に開く。
バサッと大きな音を立て。
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