灰色探偵ダニット

＃０４ 先の誘導

　…――秀也の解は、ある意味、想定されたものだった。

　しかしながら、彼が、その答えを明示する前に驚くべき展開へと昇華していった。

　情報の洪水が襲ってきて、ややもすると脳がショートして焼き切れそうになった。

　暴露に継ぐ暴露。そんな感じの流れになっていくのだ。

　うむむ。

　じゃ、秀也の解を明示する前に、そこを詳しく語ろう。

　その時、

　フーは、秀也が言いよどみ言葉が止まってしまったからこそ間をとる事を選んだ。

「フム。秀也君、どうやら電話の話は、君にとって、なんらかの言いにくい事が在るような気がします。よろしい。では、まずは、あちらから片付けましょうか」

　片付ける？　なんの話だ？

　フーが、右目でウインクをして、おもむろにホワイへと目配せする。

「はい。分かりました、お父様。では、ヤマケンさん？」

　ぼ、僕？

　は、はい。何でしょうか？

　はっきりと言葉にして応えようにも、いきなりすぎて、うなづく事しかできない。

「ああ、まただ。姉貴特有の回りくどさ。どうして、こう、ズバッと本題を切り出さないかな。てか、あたし考案の寸劇を無駄なアクションが多いって言うけどさ」

　と、ハウが話し出して、もうどうにも止まらなくなる。

　くどくどくど、もう一つ、オマケにくど。

　とホワイ批判が、後ろ頭へと両手を回してから天を仰ぐ彼女によって続いていく。

　苦笑いして二の句を繋ぐタイミングを逸したホワイが眉根を寄せる。

　無論、例によってのキャットファイトなのだが、それこそ、くどい。当然だが、話が前に進まないのも、またデフォだな。ともかく、とフーが注意する前に僕が一歩前に進み出る。そして、ハウとホワイを物理的に引き離してから二人を睨み付ける。

　キッと。

「あぅ。ヤマケンさん、その視線怖いです」

「ケンダマン、そんなに怒るなや。ごめん」

　と、二人も、想定内の反応を見せてくる。

　ともかくだ。喧嘩は、また今度の機会にだ。今は先を急げ。うむっ。

　などといった無言の圧力を眼力に込める。

「そうなのです。コホン。話を戻しましょう。さて、ヤマケンさん、お忘れでしょうか。秀也さんに、お話しをうかがう前、あなたがヒントの請求をされていた事を」

　咳払いを一つ挟んでホワイが、のたまう。

　おわっ。

　ああ。そうか。その話か。

　忘れてた。ハッキリとしたヒント請求の交渉じゃなかったから。確かに請求した。

　秀也に凄まれ仕方なくで無言のやりとりをしたんだった。でも、やっぱり、こうなるわな。借金のやりとりでも貸した方は決して忘れないが、借りた方は忘れてしまうようなものに近い状況だ。そして、しっかり徴収されるんだろうな。間違いなく。

「そのお顔は納得して頂けたようですね。では精算致しましょうか。あ、秀也さんには、なんの話なのかは分からないとは思いますが、気にしないで下さいませ」

　と、また愛らしくも恭しいお辞儀を挟む。

　脳筋な思考を持つ秀也にとっては効果的だったらしく、またまた赤くなっている。

　そして、遂には、こんな事さえも口走る。

「お、おう。一体、なんの事かは分かんねぇけど、ホワイ姉ぇさんが言うなら仕方がねぇ。俺ッちは、ちょっとの間、黙っておくよ。黙ってる間に話を進めてくれ」

　くわえたタバコを天に突き立てて口の端から白い煙を吐き出したのが小憎らしい。