#02 不甲斐ない
「あのう」
これも、また間が抜け過ぎな言葉だな。
本来ならば要件だけ単刀直入に聞けばいいのだから。
むしろ、秀也のような人種にはストレートに要件を問い質した方が好印象となる。
当然とばかりに口を挟んでくる、秀也。
「だからよ。あんた、本当に事件を解決する力があんのか? それだけの胆力があんのかよ。今は俺だからいいけどよ、これでヤクザが出てきたら、どうすんのよ?」
イライラが募っているのか、タバコを指で弾いて捨ててから、また大きな舌打ち。
だから。
だから、そうやって威嚇してくるから要件が伝えられないんでしょうが。やめて。
本当に止めて。さっさと聞きたい事だけ聞いて退散するからさ。お願いしますッ!
何度目だろうか、僕は、再び、意を決して聞きたい事を伝えようと試みる。しかしながら当然の如しとばかりに凄まれて、すごすごと退場するを繰り返す。ここまで同じ事を反復すると秀也の怒りも絶頂へと達してしまい、ことさら聞けなくなる。
てか、今現状、頭頂部を右手で押さえられて、超近距離な位置に秀也の顔がある。
そこからガンを飛ばし、あん? なんて言われてる。
怖い。本当に怖い、この人。勘弁して。
真面目に午前中に会った彼と今の彼が、同一人物なのかさえも怪しくなってくる。
このまま、ここで場外乱闘が始まってしまって腕力に乏しい僕がフルボッコにされる未来が、まぶたの裏に浮かぶ。飛ばされたガンに反応しないよう、視線を外し、外した先にいたフーに泣きっ面を晒す。目で合図する。もう、これしかないと。
そう。これこそあり得ない事なわけだ。
でも、もう本当に、これしかないのだ。
不甲斐ない。項垂れてしまう。トホホ。
「フムッ」
フーは静かにホワイへと目配せをする。
ホワイはうなずいてから僕を見つめる。
観察されている。まあ、慣れたけども。
「お父様。どうやらヒントの請求のようですよ。もちろん言質はとっていませんが、こういったものもありではないでしょうか。……そうですよね、ヤマケンさん?」
と、もし、そうならばうなずけと合図を送ってくる。
ついでにウィンクしたのは、小憎らしいが、この際、良しとしよう。
遂に、助け船が出たとばかりに必死で顔を上下に振って、うなずく。
しかし、あとで5万円を徴収されるんだろうけどな。
クソッ。
フーは、
「よろしい。秀也君、少々、よろしいか。聞きたい事があるのですが」
と一気呵成に切り込む。
まるで、真剣を上段に構えて目の前の命を刈り取らんとばかりの力が籠もる瞳で。
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