#07 済まん、割愛だ
「……フーさん、次の一手を教えて欲しい。ヒントの請求です」
今はもう、こう言わざるを得なかった。
項垂れてしまって彼らから視線を外す。
追い詰められた脱兎な如し、態度……。
ダニット一家の狡猾なる策は、いまだ続いていた。だからこそ自分の愚かさを悔いた。無論、ここまででワンセットだと思った時点で気を抜いてしまった僕が悪い。言うまでもない事なのだが、彼らは、僕が油断した、その瞬間を狙っていたわけだ。
始めからな。クソッ!
いや、始めからというのは、少々、語弊があるかもしれない。
ハウとホワイが、一手遅かったと言っているわけだから、その一手を打つ直前に策の方向転換をしたのだろう。その時点で、気が緩む瞬間に狙いを変えたと言うべきか。まあ、そんな事はどうでもいいのだよ。それよりもだ。遂に、僕は……、
この性悪たちの策にハマって、ヒントの請求をさせられてしまったというわけだ。
詳しくは、悔しいので省かせてもらう。
聞いて欲しくもない。言いたくもない。
ただし、……これだけは記しておこう。
いつもの通り、いつものように雑談と称して会話をさせられて、そののち、まるでじゃんけんをするかのよう僕はグーを出さされ、やつらは笑いながらパーを魅せてきたというだけの事だ。分からない? 済まん、考えたくないんだ。本当に、ごめん。
ともかくホワイお得意の花言葉で言えば、ヨウラクユリと言ったところだろうか。
ますます意味が分からなくなったって?
いや、こっちだって、こんな性悪と長い時間一緒にいて精神力が、ほぼほぼ0なわけだ。つまり我慢して付き合っているのだ。だからこそ我慢してくれ。もし、どうしても知りたいならば、ヒント料を払ってくれないか、僕に。一回分で良いからさ。
払ってくれたら懇切丁寧に重ねて事細かに話そうじゃないか。
うむ。そういう事だ。
だから勘弁してくれ。
兎も角。
時間を、この口惜しくも悔しさが加速していた今へと戻そう。
「フムッ」
とフーが、さも当然とばかりに口の端から歯を魅せて微笑む。
「では5万円の方を現物で頂戴できますか。ヒントは、それから開示しましょうか」
封筒の中から虎の子のお札を取り出す。
のろのろと嫌々にも。
福沢諭吉先生が累々と涙を流している。
僕には、そう見えてしまい仕方がない。
クソッ。
策にハマってしまったという不甲斐なさから、カチッと決めていた髪型を崩すようガシガシとかきしだき舌打ちをしてしまう。灰色探偵と付き合ってきて、こんなにも嫌な気分になったのは、朝、下剤入りのモーニングを食べさせられた時、以来だ。
いや、あの時以上の屈辱とさえ思える。
兎に角。
これで合計して65万払った事になる。
無論、残っている現金は15万となる。
ヒントの回数にして3回というわけだ。
心細くもなり、本当に解決まで、たどり着けるのだろうかと弱気にもなってくる。
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