Chapter13 証明

#01 金塊

12月20日 午後2時36分。


 …――さて、どうしたものか。


 僕は立ち尽くしてしまい、無言でダニット一家の動向を見つめる。


 時は、のろのろと流れて手持ち無沙汰にもなり居心地が悪くなる。


 平和な冬の午後は眠気を誘う。


 寒くも温かい陽気こそ凶器だ。


 欠伸が出そうにもなるが、さすがにそれは不味いと口を強く結ぶ。


 兎に角、


 一正とトラック運転手が、繋がっていない可能性が高いとは分かった。理解した。


 だからといって目の前のトラックのどこをどう調べればいいのかという肝心な事は、なに一つ分かっていない。だからこそトラックを調べている彼らを眺める事しかできない。もちろんダニット一家が、なにかを見つけても教えてはくれないだろう。


 自分で見つけるのです、とだ。


 改めて確認するまでもないが。


 唖然と口を半開きにして立っていたからか肩が凝ってきて軽くだが上下に揺らす。


 そうだな。思う事は、確かにある。あるのだが、それは事件とは全く関係ない事。


 この宅配会社で、何をどうして、警戒心を解いたのかという事だ。


 先に、ヒント料10万円分でタネ明かしをしますと言われたアレ。


 ただし、


 これは、間違いなく知的好奇心でしかない。


 灰色探偵とさえ言われる彼らの企業秘密を知りたいという過分な欲求に過ぎない。無論、そんな贅沢とも言えるような事でヒント料を使いたくはない。今、持っている依頼料は、奈緒子の父親から預かった大切なものなのだから。ここは我慢の一手だ。


「フムッ」


 相変わらず、タイヤとにらめっこな、フー。


 ハウとホワイといえば自分が調べるべき場所を精査し終えたのか、またシンビジウムに興味を奪われている。やつらの花好きは知っているが、なんの変哲もない花の一つで、これだけの長い時間を潰せるのは感嘆に値する。もしかしてなのだが……、


 花の花弁の中に金塊でも包まれていたのか?


 ないか。


 ないな。


 ……あり得ない。アホらしい。


 ハハハ。


 などと意味のない事まで考えてしまうほどまでに、僕は途方にくれていたわけだ。


 と唐突。


 僕の心を読んだかのようホワイが言い放つ。


「ハウ。ここに金塊があります。見えますか」


 事件に対しての値千金にもなる金塊がです。


 フフフ。


 と目を細めて静かにも微笑む。


 中心を白い人差し指で指さす。


 ちょっと待て。マジか。金塊?


 だとッ?


 金塊だよな。聞き間違いなんかじゃないよな。マジか?


「ああ、そうだね、姉貴。柱頭だわさ。黄色だから金塊にも見えるかも。てか、ケンダマンの話でしょ? その金塊ってやつ。相変わらずハッキリ言わないな、性悪」


 と、ハウが視線を向けてくる。


 さも面白いとばかり。笑って。


「フフフ」


 もはや敢えて言うまでもないが、意味深な笑いを浮かべるホワイ。

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