#04 結論
唐突ッ!
コンコンと2回ほど軽い音で、運転席側の窓が叩かれる。
窓越しに、あの柔和で温かい笑みが見える。
し、しまった。今はまだ捜査の途中だった。
途端、僕は世知辛い現実へと引き戻される。
「どう致しました。死にそうな顔をしてますよ。フムッ!」
フーだ。
とりあえず、静かに窓を開けて謝辞を示す。
「あ、ごめんなさい。すぐ出ます」
僕は、のろのろとドアを開けて、合流する。
と、ここで更に逆の可能性に気づく。いや、逆と言ってしまってもいいのか……、
それは分からない。
それでも秀也とトラック運転手も面識すらなかったのではと気づいたのだ。そこに逆の可能性を感じた。一正とトラック運転手が知り合いではないという理由が、秀也にも当てはまるからだ。しかし、秀也は、決して犯人に興味がないわけがない。
秀也は別れ際に、こう言っていたのだから。
『最後に言っておきてぇ。もしだ。もし、あんたらに事件を解決できるだけの力があるんだったら絶対に解決してくれ。俺だって哀しいんだからよ。四露死苦ッ!?』
と……。
この言葉を吐ける人間が、殺したとされるているヤツに興味がないのならば……、
それこそ、本人が犯人だから、でしかない。
しかし、
フー達が言うには秀也は犯人ではないから、犯人に興味があると言ってしまってもいいだろう。その興味の対象こそが、あのおっさん。トラック運転手だ。しかし、秀也と話した際にも、おっさんの話は出なかった。だったら知らなかったのでは?
と言ってしまっても何ら問題はないだろう。
もし、知っていたならば話に出るどころか、間髪を入れず、運転手のおっさんを襲撃さえしているだろう。秀也のあの性格ならば、そうすると断言できる。奈緒子に近寄る男どもに制裁を加えていた彼ならばだ。と、ここまで考えて肩を落とす。
だから、なんだなんだ、と意味のない思考ではないのかと思ってしまったわけだ。
一正にしろ、秀也にしろ、犯人と面識がない、或いは興味がないからといって事件を解く鍵にはなりはしない。そう考えてしまった。無論、それらの思考はCVさんからもたらされたもので、そのCVさんが何が言いたかったのか分からなくなった。
この事件における大きなウェートを占めるとは、一体、どんな意味があったのか?
分からない。なにも。少し悲しくなった。自分のどうしようもない不甲斐なさに。
やっぱり僕は素人だなと思った。
アハハ。
と、空を見上げて、から笑った。
「ふふふ」
と、ホワイが意味深にも微笑む。
その顔つきは、なにもかもお見通しなのだと言わぬがばかりにさえも見えてくる。
「答えは、もう出ていますのに。いつも思うのですが、解を掴んでから、その解に沢山の風船を付けて空に放つのはヤマケンさんの悪い癖ですわ。でも、それも……」
「また面白いでしょう? 姉貴ッ」
と続けてハウが歯を魅せ笑った。
「ふふふ。その通りですねと言っておきましょう。そしてポインセチアを贈ります」
とホワイは微笑んでから応えた。
フムッ!
と、2人の様子を見ていたフーも微笑んだ。
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