#03 興味がない
スマホを握りしめ眉根を寄せる。
少々、混乱して、戸惑ったのだ。
CVさんが、何を言いたいのか分からなかったからこそ。
続きを待つ。じっと押し黙ったままで、スマホを見つめ。
来たッ!
>もしトラック運転手の存在を知っているのならば一正さんに事情聴取をした際、少なからずトラック運転手の話が出るはずです。彼に彼女を殺されているのですから。
あ、……、そうか。確かに、だ。
つまり逆に考えるという事だな。
今現在、奈緒子は、あのおっさんに殺された事になっている。つまり一正にとって憎むべき存在こそがトラック運転手なわけだ。だったら一正に話を聞きに行った時、CVさんが言う通り、トラック運転手のなんらかな話が出てもおかしくない。
いや、むしろ話が出なかったという事実は、その存在を知らなかったとも言える。
忌み憎むべき相手をどこの誰だか知らないのだから話にも出しようがないわけだ。
知っていれば話に出てもいいと。無論、トラックに轢かれて死んだ事は知っている。だから運転手の存在は予測できている。しかし、その運転手が誰なのかを知らない可能性は高い。知らなかったからこそ、話にも出なかったと結論づければ、だ。
なるほど。それは盲点だった。さすが四つ葉のCVさん。
>この知らないという事実は大きなウェートを占めます。なぜならば、今現在、被害者を実際に殺したという犯人に興味がないのだ、とも言い換えられるのですから。
犯人に興味がない。確かにそうとも言えるかもしれない。
興味がないから知ろうともしない、とそういう事だろう。
でも愛すべき女を殺した犯人に興味がないなんて……、本当にあり得る話なのか?
うむむ。
今は何とも言えない。ただし、理論展開には納得できる。
>それは……、いや、ここで止めておきましょう。大切な事は申し上げましたので、これ以上、私感を繰り広げて混乱させてもですからね。よろしいでしょうか?
今回の四つ葉のCVさんからの助言で、最後の方は、いまいち納得できなかった。
川村一正が犯人に興味がないなんて、あり得るのかとだ。
もし、あり得るならば、いや、考えるのはよそう。そんな事は、あり得ないから。
納得はしていないが、ご報告ありがとうございますと打ち込み、お礼をしておく。
会話を終える。ただ終えたあとも、いまだに犯人に興味がないというワードが頭の片隅に引っかかってしまっていて、それは、一体、どんな状況だ? と悩み続けた。犯人に興味がない被害者サイドの人間などいるのかと……、そればかりを。
しばらくの間、絶え間なくもだ。
もし、本当に興味がないとするならば、やはり犯人は一正になるのかとも思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます