#02 ホッと一息

 どちらにしろだ。元同僚など今回の事件に、なんの関係もなかった。


 その事実だけで、改めて、今は推理ゲームをしているのだと感じた。


 性悪探偵ダニットとの化かし合いをしているのだと、そう気持ちを改めたわけだ。


 さしずめ敵の捨て身技である巴投げが綺麗に決まって、今回の僕は受け身さえもとれず、叩き付けられたわけだ。そして、HPも0になってKO。というか、もう帰ってもいいか? とさえ思った。どっと疲れたから帰って寝たいと考えたのだ。


 時間も気にせずに、ゆっくりと。


 しかし、


 真相が、それを許してくれない。


 早く明かしてくれと、せっつく。


 目の前を走るヴィアッド500が古い倉庫を改造した宅配会社へと進路を変える。


 申し訳程度でしかない、狭苦しい駐車場へと入ってゆく。


 僕も右ウィンカーを点滅させてヴィアッド500に続く。


 どうやら、悔しい紛れにも、今、起こった信じられない出来事を回顧してしている内に本来の目的地に着いたようだ。指定の場所に車を停めてハンドルに突っ伏す。たまった疲れがそうさせた。目を閉じてから浅い呼吸を何度かして渇きを覚える。


 ドリンクホルダーに突っ込まれていた緑と黒の缶が珍しいボンスターを手に取る。


 すでに生ぬるかったが、渇きには勝てず一気に飲み干す。


 ゴクリと喉を鳴らして流し込む。


 スマホが鳴って呼び出す。僕を。


 もしかして四つ葉のCVさんか?


 一番の協力者である彼〔彼女か?〕からの連絡ではないかと、いくらか心が躍る。


 ダニットとの付き合いは、精神力をガリガリと氷を砕くように削られるからこそ。


 やっぱりCVさんからだ。よし。


 嬉しくなって、笑みもこぼれる。


 ホッと。


 まだ頑張れると力も湧いてくる。


>トリックについては、いまだ考察中です。それよりも一正さんとトラック運転手の関係について、まとめました。もちろん、私感でしかないのですが、お聞き下さい。


 うんうん。私感でも、何らかの進捗があるならば嬉しい。


>前に山口さんからのコメントで、一正さんが、トラック運転手の事を一言も口にしなかったという事を聞きました。で、思ったのですが、彼らは面識がないのではと。


 面識がない。それはまたなんで?


>それどころか、その存在すら知らない可能性があります。


 へっ? なんでだ。あり得ない。


 事故とは言えど、あのおっさんに殺された事になっているんだ。それを知らないなんて、太陽光発電で作られる電力が、陽光で生まれているのだとは知らないと言っているようなもんだぞ。太陽は知っていても陽光を知らないみたいな感じだな。


 四つ葉のCVさんほどの考察でも間違える事があるのか。


 珍しい。

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