#05 相変わらずの二人
「ああ、その顔はッ!!」
とハウが大げさに言う。
藍色の瞳が大きくも見開かれて、ともすれば飛び出してきそうな位のイキオイだ。
ギャグ漫画のソレと言えば分かりやすいか。
てかさ。
いや、別に変顔になっているつもりはない。
むしろ、今のお前の方がヤバげな変顔だぞ。
僕は普段通りなのだが、本当に、どうした?
その如何にも嘘くさいリアクションと予定調和に持ち込みたいと言わぬがばかりの発言は。ホワイからの助言がないハウは、こんなものなのか。なるほど。騙されやすい僕でも、胡散臭さと、いかがわしさが丸わかりだ。恥ずかしいくらいにな。
厚顔無恥なハウは、しれっと二の句を繋ぐ。
この辺りが、ハウという人間の強さかもな。
「あたしがどこに行って、なにをしていたか、知りたいって顔だね?」
一際、でかい声で、わざとらしく、且つ、恩着せがましく言い放つ。
藍色で澄んだビー玉のような瞳を、くりくりとさせ忙しなく動かす。
嘘くさい。嘘くさ過ぎる。ヤバい位に……。
別に知りたくない。全然、知りたくないぞ。
僕は、両手のひらを彼女へと晒してから左右に振って、ノー・サンキューな合図。
「マジで。マジで知りたくないの? マジ?」
慌てふためくハウ。なんか可愛い。不覚にもだが、そんな事を思う。
てかさ。
多分に、
ヒント料をせしめる為に、僕が知りたい顔をしている、と敢えてで言い出したんだろう。それこそが、わざとらしさが生み出す、ご都合主義的な展開への序章わけだ。無論、ヒント料は残り4回分しかないから無駄遣いは控えたい。だからこそ……、
ハウからの申し出は、丁重にお断りしたい。
でも、正直、知りたい事は知りたいのだが。
「ハウ?」
とホワイがしずしずと一歩前へと進み出る。
満を持して、ここで、ご登場になるご令嬢。
薄茶色をしたタレ気味の目を細めて告げる。
「少々、意地が悪いのではないですか。ここはヒントなしでもいいでしょう。別に推理に関わる事でもないですしね。それに、そんなに大した事でもないでしょうに」
と笑む。
裏が在る邪悪なる微笑。
「ここはゼラニウムと言っておきましょうか」
「ああッ! ハウちゃん大活躍を馬鹿にした」
ハウがホワイの瞳を突き刺すんじゃないかというイキオイで右人差し指で指さす。
「ヒント料請求に値する値千金な情報収集をさ。ハウちゃんがいなきゃ、大事な情報を掴み損ねたんだぞ。それを大した事じゃないって、一体、どんな了見だわさッ!」
と人差し指が描く射線はフォーク・ボールよろしく、瞳からグッと一気に落ちる。
ホワイの小さな鼻頭に、ぷににっといった柔らかい音で突き刺さる。
五月蠅くて、鬱陶しいと、半笑いなホワイ。
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