#03 ボインなバイン
あり得ないほど、てきぱきと3人が3人とも自分の役割を理解してから動き出す。
逆にだ。
僕の理解はついていかず目を皿のよう大きくする事しかできない。
というか、気まぐれでもありがたい。本当にありがたい。感謝しかない。この場において、今の僕ほど役に立たない人間はいないからこそ。それどころか、絶妙なるチームワークを魅せ、なにかしらのアプローチをし始めた事に心強さすら感じる。
ただし、あとで何もなければの話なんだがな。
「どうも」
と、フーが、僕と同じく三つほどノックする。
被っていたハットを手で、つまんでから取る。
軽い会釈も添え。
「わたくしは私立探偵のフー・ダニットと申します。お時間は取らせません。一つだけ確認させてもらえませんか? 一つです。それで無罪を証明致しますので」
上手い。
流石だ。
絶妙なる言い回し。しかもだ。
たった一つの質問だけで無実を証明できると言い放てるのは……、
やはりフーが探偵〔プロ〕だからなのだろう。
僕にはできない芸当。いや、思いもつかない。捜査というものを十全に理解していて、場面、場面での最善手が、引き出しに、沢山、ストックしてあるからこそ。もし、これでも拒絶されてしまったら、これ以上、彼に突っ込む事はできないだろう。
そう思わせるほどの匠がなせる最終決戦兵器。
さあ、どうでる?
息をのんで、静かに先を待つ。
「だから」
と声が聞こえてから間が開く。
ゴクリ。
「話す事は、なにもねぇよ。帰れ。今度、ノックしやがったら、警察を呼ぶからな」
僕は、右手で目を覆って、また、いくど目かの天を仰いでしまう。
ダメか。
ハアッ。
これでもダメか。マジか。もはや打つ手なし。
肩を落としてから上目遣いでフーを見つめる。
フーは、
悪戯っ子ぽくも赤い舌を少しだけ出して笑む。
のち、コンコンと軽い音で、二回ノックする。
おいおい、警察を呼ばれるぞ。
といった心配も、どこ吹く風、しれっと聞く。
「奈緒子さんの死は事故ではありません。それは、もう分かっているのですよ。しかしながら事故ではないと証明する為に聞きたい事があるのです。よろしいか?」
よろしいかじゃない。ヤバいって、これ以上、しつこくするのは。
慌ててフーの口を塞ぎにかかった僕をホワイが羽交い締めにする。
ヤバいって。真面目にヤバいって。むぐぐッ。
暴れる。
暴れる。
暴れる。
というか、ホワイ嬢は体格に似合わず怪力だと、この時、知った。
というか、胸があたってる。ボインなバインが背中にぐいぐい押しつけられてる。
あたってますよ。あたってますから。いいの?
よろしいのですわ。敢えてですから。フフフ。
ち、力が抜けてゆく。エロスと怪力によって。
「大丈夫。お父様ですから。少しだけ静かにお待ちになって下さい、ヤマケンさん」
と羽交い締めにした腕から抜け出た僕の唇の前へと右の人差し指を力強く立てる。
彼がキレる。イライラが頂点に達したようだ。
「よろしいかだと? それこそ警察を呼んでもよろしいかだ。アハハ。てか、もう110を押したぞ。どんな罪になるかは分からんが、後悔しろ。警察はしつこいぞ」
嗚呼、110されてしまった。
僕らの留置場行き待ったなし。
待ったなしです、はっけよい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます