#04 暴走理論
「もう少しだけ、お時間を頂けますか?」
フーのヒントの請求ですかの視線を背にひしひしと受け、敢えて突っ込んでみる。
僕にだって、これ位はできるんだという事を見せる為にも。
いや、見せるというよりも魅せるという漢字を使った方がいいのか、などと、どうでもいい事を考えながら毅然とした態度で秀也へと挑む。無論、恫喝されるのかもしれない。下手をすれば暴力さえふるわれるかもしれない。それでも引けなかった。
引きたくもなかった。
絶対に。
これこそが僕なりの確固たる覚悟であり、気合いなわけだ。
右拳を強く、ぎゅっと握りしめ、しっかりと前に臨み視線を定め秀也を見つめる。
「なんだよ。ちょっとだけならいいぜ?」
またまた意外な事にも、秀也は軽い感じで承諾してくれた。
ふはぁ。
慣れていない気合いなんてものを、どっと入れると疲れる。
秀也は、
もう一本とばかりにタバコを取り出してから、火をつける。
思うのだが、秀也という人間は、こちらが礼を尽くしていれば無闇矢鱈に相手を邪険にするようなやつではないらしい。むしろ協力的な面を省みれば基本的な本質として、いいやつなのかもしれない。ただし暴力に訴える面さえなければの話だが。
「あと一つだけ聞いておきたいのですが」
「ああ。分かった。なんでも聞いてくれ」
紫煙を口から吐き出したあと、再び鼻から吸い込む、秀也。
とにかく僕は僕の推理〔※敢えてこう言っておこう〕を真正面からぶつけてみる。
「一正君の前の車が事故で廃車になったと聞いたのですが、その件について、なにか知りませんか? 無論、どんな些細な事でも良いので教えて頂きたいのです」
そうなのだ。一正の廃車になった車に対して秀也が、なんらかでも関わっていた。
と、一正と話している時、そう感じた。
だから、ここで問いただしておきたい。
無論、僕の推理など素人の手習いでしかない。それも分かっている。だから見当違いな問いの可能性もある。それでも、フーに、ヒントの請求ばかりして自分で、なにもやっていないと思われてしまっては後々にひびく。だからこその特攻なわけだ。
「あのよ」
秀也がタバコの煙を、胸一杯、吸い込んで一気に吐き出す。
紫煙が、僕の顔面へと吹き付けられる。
クソっ。
失礼なやつめ。それとも敢えてなのか?
どうやら秀也の闇が表面化したようだ。
「俺ッちは黒道化師〔ブラック・ピエロ〕ってとこの特攻隊長さんなのよ。もちろん喧嘩上等だが、暴走り〔はしり〕で売ってる。まずソレを理解して欲しいわけよ」
うむむ。
まあ、とりあえずでも理解しておこう。
「でな。そんなチームの特攻隊長さんが暴走りでのタイマン勝負を挑まれたら、どうなると思う? 喰うか、喰われるかだ。運命も天命も、もちろんテクも含めてだ」
テクってのはテクニックの事だろうな。
つまり、この場合、運転技術って事か。
決して理解できない暴走族理念だが、まあ、でも秀也にとっては正論なんだろう。
秀也は、
一旦、間を置いてタバコを指先で弾く。
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