Chapter04 ルール
#01 限度
12月19日 午後9時12分。
フーのお店である、ふわふわの駐車場に停めてあったフーレアワゴンに目をやる。
愛車だ。
そして、
独り言。
「あれが、ゲームにおいてのルールなわけか」
リモコンキーのキーリングに右人差し指を静かに差し込む。
くるくるっと、軽い音が立つかのようキーを回して考える。
「唯一の」
…――世の探偵たちは殺人事件を依頼として請け負わない。
まず、この前提をハッキリとさせておこう。
現実問題として、メリットに対してデメリットが大き過ぎるからだ。つまり、殺人事件を依頼として背負い込むと命の危険を伴う。それの犯人とは、大概が凶悪な人物で、加えて、あとがない切羽詰まった者たちとなる。ゆえ、なりふりなど構わない。
守るものも、己以外ないとも言えるだろう。
だから、
そんな危険な殺人犯を追い詰めるという作業は命知らずだとしか言えないわけだ。
そんなわけで、今現在、この国の探偵達の多くは殺人事件を担当しようとしない。
殺人などの凶悪事件は警察の領分であると弁えている。無論、警察側も、そういった事情を把握しているが為、まかり間違って、探偵がしゃしゃり出てきた場合、お門違い、分不相応と、彼らを、はじき出そうとするくらいだ。現実は、そんなもの。
僕はリモコンキー解錠ボタンを押して愛車のロックを解く。
ガチャリという、少々、軋むような音を立てて解錠される。
そののちワインレッドに彩色されたドアをゆっくり開ける。
愛車の運転席に収まる。
「ふうぅ」
と大きく一つ息を吐く。
とにかくだ。実際問題、
物語での探偵達が華やかに殺人事件を解決するというのは、やはりロマンなのだ。
だからこそだ……、僕と奈緒子の父親はフー・ダニットに事件解決を依頼する際、
いかほど依頼料が妥当なのかと悩み抜いた。
彼らは、この国でも、とても珍しい、どんな事件だろうと請け負う探偵。そして、驚異の解決率を誇る。だからこそ、依頼料も、それなりだと考えたのだ。とはいえども、懐事情と相談し、どれだけ考えてみても3桁は出せないという結論に至る。
そして出た金額こそが、
80万円というものだ。
奈緒子の父親とも良く相談してから、その上で出た金額だ。
無論、そのカネは僕に渡されたものであるから、30万円を依頼料として払った今、浮いた50万円〔※今は45万だが〕は僕のものとなる。このまま解決まで何事もなければ臨時収入となる。ただし、ヒント一回につき5万円だ。
愛車にキーを、そっと差し込みキーを回す。
きゅるるっとセルが回る軽快なる音がする。
つまり、
ヒントが十何回と複数に及べば、同時に依頼料も膨らんで、ともすれば足がでる。
より正確に計算すればヒントが10回で5万円×10で50万円也だ。
だからこそ、僕に許されたヒント数は10回というわけだ。
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