#04 お遊び

 …――面白いもの、魅せてあげるよ。


 ハウが笑いながら言う。


 そののちスマホを僕の顔の前に晒す。


 あの僕の心が詳細に暴露されたダインが入っている彼女のスマホだ。


 今度はダインの文章ではなく動画だ。


 どうやら、先ほどの待ち合わせの時に撮っていたらしく、画面の中で、忙しくなく指を動かしたり、貧乏ゆすりをしているのが僕。それ以外にも細かい動きは挙げればきりがないが、要するにスマホの中で僕は落ち着きなくソワソワしているのだ。


 まあ、居心地の悪い店で待たされ続けて、イライラしていたのだから仕方がない。


 音声を聞くと「送信ッ」とハウが言った場面となる。


 このあと程なくしてフーからのサービスな一杯をもらうという所だ。


 無論、画面の中で動く僕とハウのセリフはちぐはぐ。


 他人がしゃべっている事は一目瞭然。


 それが、一体どうした?


 全然、面白くもないぞ。


「この画像をね。こうするの。アハッ」


 と再生が終わったばかりの動画画面の下にある赤いボタンを、すっと素早く押す。


「完了ッ」


 ……、?


「で、これを再生すると」


 先ほどと、まったく同じ場面が、再び繰り返される。


 しかし、


 えっ!!


 僕は絶句してから目を大きく見開いて画面に見入る。


 なんと。


 なんとだ。先ほどのハウのセリフが、僕が発しているように見える。


 先ほどのまでの動画と違い、動画に対してセリフが遅れているのだ。


 送信ッっと言った瞬間、僕の指が机をコツっと叩き、その後、ハウへと視線を移してから天井を見た瞬間、ふうん。なにか勘違いしてるみたい。だから甘いっていうんだよねと重なる。おいおい、そんな事を言った覚えがない。しかも女子の声で。


 ハウの独り言が遅れて聞こえてくるからこそ僕の動きにバッチリとハマっている。


 ど、ど、どういう事だ?


 今の一瞬で動画編集したというのか?


 そんな時間は、どこもなかったぞッ。


 それともそういうアプリが在るのか?


 いや、音を遅らせるアプリなんて自分で開発しない限りあり得ない。


 そんなアプリを作っても利用する奴なんて誰もいないのは言うまでもないからだ。


 やっぱり自作したのか?


 そんな無駄なアプリを。


 それでも、僕の挙動とセリフが合致するはずはない。


「フフフ。アプリの可能性を探っていますわね。オダマキですわと言っておきます」


 とホワイが、口に手を充ててクスクスと小声で笑う。


 ニィっと白い歯を見せ両口角を緩やかに上げるハウ。


「オダマキは分かる。姉貴の口からよく出てくるからさ。まあ、意味は伏せておく。ところでアプリなんて使ってないよ。こんなの誰でもできるトリックさ」


 トリックだって、今のが? どんなトリックなんだ?


 音が遅れてくるのがか?

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