#04 待ち人
つまり僕が達した結論は、こう。
女子高生こそが件の性悪な探偵。
そして、
待ち合わせを装い、僕に興味がなさそうにしている彼女は、その実、密かに観察している。僕をだ。無論、彼女は、まったくの無関係で店とは別の場所から探偵が観察している可能性もある。隠れている場合だ。あるにはあるが、それでも……、
曲りなりでも彼女も待ち合わせをしている事を省みると……、
しかも、
いくら待っても彼女の待ち人が現れない事実を省みると……、
あの場所から観察している方が合理解なわけだ。
僕の近くで観察するのにはうってつけな心理的に死角になっているからこそ、だ。
この店にいる客は僕を含めて二人で僕と彼女しかいない。死角はそこにしかない。同じ客として観察をする方が、よりも多くな情報を得られるし、騙されたという気持ちが、より大きくなるのも、また客として僕を観察していた場合だろう。
「女子高生な探偵、フー・ダニット、見参ッ!!」
そんな絵面が抽象的に、ほわっと脳裏に浮かぶ。
「バーカ」
エッ!?
「本当にバッカッじゃないの。あいつ、信じられない。本気なの。呆れるよ。てか、どんだけ待たすのさ。で、待った結果がこれ。本当に信じられない。つまんない」
またスマホを見ている。ただ端末を握りつぶすほどの勢いだ。
二の腕の筋肉がぴくぴくと細かく痙攣しているのか、服の袖が微かに揺れている。
スポーティーな感じの彼女は、筋肉も、また豪快なのだろう。
と……。
カランコロンと軽やかなるドアベルが鳴り響く。
思わず、店の入り口へと視線が釣られてしまう。
入ってきたのは、OL風の女性。
まだ若い。ギリギリだが成人していないかくらいの容姿風体。
店内にいる女子高生がカジュアルだと表現するならば、彼女は落ち着いた感じでシックと表現出来る。正反対で真逆の属性を持っている。ゆっくりとした所作で店内をぐるりと一瞥したあと、おもむろに右手を挙げる。女子高生が気づく。
呼応するよう彼女も、また右手を元気一杯に挙げてから振る。
「姉貴ッ」
「ごめんね、ハウ。遅れて。待機している内に面白くなっちゃった。なんだか心がころころ動いて興味が尽きなかったの。気分はベニバナ。で、お父様は相変わらず?」
「ああ、そっか。だからか。さっきからダインが止まらなかったの。なんか速射砲だった。てか、パパは相変わらず。あたしは、そろそろ飽きてきたんだけどね」
などと会話を交わして、女子高生の対面に座るOL風の女性。
椅子を引く所作から座るまでの一連の流れが、古風な、それを色濃く現していた。
一方、女子高生は待ち人現るが嬉しかったのか、机をバンバンと強く叩いている。
そして、
女子高生が持っていたスマホを二人で見つめて、なにやら反省会のようなものが始まった。無論、席が離れているから細かい会話の内容までは分からない。が、ここでは、こう考えていたとか、ここでは、こうね、というのが漏れ伝わってきた。
時折、豪快に笑う女子高生と口に手を充て笑うOL風の女性の姿が印象的だった。
なんだよ。あのOLの女性が待ち人だったのか。
どうやら、さっきの推理紛いは、素人の手習いだったわけだ。がっくりと力なく肩を落とす。慣れない事はするもんじゃないな、と。ともかく、これで振り出しに戻ったわけだ。僕が待ち続けるフー・ダニットという探偵は、一体、いつ来るのか。
そればかりに思考が偏り、また苛立ちが募った。
くそっ。
などとという口汚い言葉まで出てしまうほどに。
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