そのバカ代表がコイツらってこと?
三人には確認したいことが多すぎる。
「まず、名前」
「イラム・ルーベット」
「ツイル・カグレイム」
「ソラン・フォルテ」
本名名乗られてもわからん。
「────── 所属ギルドとアバター名。どうせゲームに参加して課金を煽っていたんだろ?」
予想は当たっていたようで少し黙っていたが、睨み続けていたら諦めて口を開いた。
「『平和旅団』のシャーベット」
「ウチのギルメンかよ」
「はい、そうです」
三人の中で一番小柄なせいか後ろに座っている緑髪のボブカット。
中性的な顔立ちで、声だけでは男か女か分からない。
さっきツイルと名乗っていた。
「『真実の眼』の
「『のんびり日和』のキュリオ」
紅目兎がイラムという名前で女、キュリオの本名がソランで男。
この二人は別のサーバーで見かけたことがある。
サーバー対戦で活躍していた。
ただチートじゃないかと噂されていたが……
「チートじゃなくてバグだったか」
「え? チート? バグ?」
私の言葉に困惑している二人。
「アンタら二人、重課金でもありえないデータでゲームに参加してるんだよ」
「え? ─── 計算間違えた?」
「それはあとで自分たちで調べな」
「「はい」」
そんなことで時間はとっていられない。
ほとんどはみんなの前で説明してもらうつもりだ。
「さっき裁定者がどうとか妖精王がどうとか言ってたけど。あれってゲームキャラでしょ?」
「え……? お二人をモデルにしたキャラは畏れ多くて作っていない」
「いるはずだよ、ゲーム開始直後に流れる神獣世界のCG映像に」
ゲームにアクセスすると自動でログインされる。
それが終わると【ログイン済み】と表示されて、その下に【ゲーム開始】が表示される。
ゲーム開始をタップするとゲームに入れるのだが、時々ゲームの世界設定が説明される神獣世界のCG 動画が流れる。
人や魔族が住む世界と神獣や妖精たちの住む世界は別にあるというものだ。
右上にスキップ機能がでるため、高確率でスキップされるらしい。
私みたいに可愛い物好きな人は飽きずに最後までみている。
「その中にいるんだよ。私はどちらも妖精か神獣キャラだと思ってたけどね」
神獣や聖魔獣は最初可愛い動物キャラだ。
それをドロップアイテムで成長させていくと、どんどん人に近い姿になる。
最終的に人間のような外見まで育てつつレベルを上限まで上げていく。
最終形態になれば愛情を上げるアイテムを与えてレベルを上げ続けることでキャラクター同士の絆が深まる。
その『絆制度』で限界まで育てた彼らがさらに強くなる。
ただ、このゲームはリリースされてまだ四ヶ月。
まだ幼獣の姿が暗転状態で公開されているものの、大半が未登場のキャラだ。
だからこそ、オープニングのアニメーションでどんなキャラが出るのかをみてイメージしていた。
その神獣たちはこの世界に存在しているらしい。
「ただ、神獣や精霊の信仰が弱まったせいで、神獣世界とを繋ぐ道が弱まりつつあるんだ」
それを補うために、私たちの世界に目をつけられたそうだ。
それは私のように神獣や妖精を愛でたり、ほかの人たちみたいに課金で成長させたりすることで神獣世界が回復してきたそうだ。
「確実に神獣世界に続く道が回復されたんだ」
「だから? それで何だというの? お礼のために観光に招待してくれたってわけ?」
「─── 違う」
「そうだよね。あのお知らせに『異世界に蔓延る闇を退治する』ってあったよね。─── じゃあ、『蔓延る闇』って何?」
無言で答えようとしない三人。
その代わりにタブレットが答えた。
『魔導具が発展し、今では魔法より魔道具が主流となりつつあります。それは神獣世界から与えていた魔法球を求めなくなるということ。一部の魔法球は魔導具に使われていますが、それすらも減りつつあります。今では魔法球はダンジョンから出るゴミとして価値がなくなっています』
「それをどうしたいの? 魔導具を壊しまくりたい? それとも使用者を滅したい?」
『いいえ。私たち神獣世界はそれもこの世界の理の一つだと認識しています。繋がりがなくなるだけで神獣世界が消えるわけではないのですから。ですが、神獣世界を信仰している方たちが納得しないのです』
「そのバカ代表がコイツらってこと?」
「バカとは何だ!」
「バカでしょ! 異世界の私たちにまで迷惑かけて!」
「仕方がないじゃない! ────── もう、これ以外に方法なんて」
「あったでしょ」
一度俯いた三人だったが、私の言葉に勢いよく顔を上げた。
「自分たちで言ったじゃない、『神獣世界に続く道が回復された』って。そのまま続けていれば、もっと回復したってことでしょ。ここに連れて来たせいで、課金による回復は出来なくなったよね」
「あ……、それは……」
「連れて来ないで、ゲームという形で遊ばせて課金させていればよかったじゃない。だからバカだと言ったんだよ。ちがう? 私、間違ったこと言ってる?」
今度は誰も反論してこなかった。
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