しろ!


「ところで、参加者は私で最後?」

「────── 異世界に繋がる扉が封じられた」

「それはどういうこと?」

「ゲーム自体が消えた」

「私たちは戻れるの?」

「───────── わからない」


その言葉に思わずそう発言したキュリオの頬を引っ叩いた。

私の力は一般人より弱い。

だから平手打ちをした相手より私の手のひらの方がジンジン痛い!


「ふざけんじゃないよ! お前らの全身全霊をかけて全員を生きて帰せ!」

「そ、そんなこと出来ない……」

「出来る・出来ないの問題じゃねえ! ! それが出来ねえなら自分の世界のことは自分たちで解決しろ!」

「そんなことが出来るなら、こんな苦労はしていない」

「じゃあ、巻き込まれた私らはどうなる! お前らののに巻き込まれた私は⁉︎ みんなにも生命をかけさせるんだろうが! だったらお前らの世界に生きる者も全員みんな生命を張れ! それが最低限の礼儀だろうが!」


男を平手打ちするために立ち上がった私は裸足だ。

タブレットを持っているがそれ以外は部屋着のままだ。

床の冷たい石畳が私の理性を保ってくれている。

そうじゃなければ、三人をタブレットが壊れるくらい殴っていただろう。

足の指が折れるくらい蹴って踏みつけているだろう。


「みんなに会わせろ」

「─── ああ」

「まだ上から目線か?」


いかりを隠しもせずに吐き捨てるように言うと三人は顔を俯かせた。


「さっさとしろ」

「は、い。こちらです」


女二人と思っていたが、この小柄な人物は男だったようだ。


「お前らも来い」

「─── え?」

「もう誰も来ないなら、ここにいる必要はないでしょ」


返事はない。

ただノロノロと立ち上がっているところをみると一緒に来るのだろう。


私は三人と共に、先に連れて来られた人たちが集められている部屋へと向かった。




ここは城だった。

いまは捨てられた城、とのこと。

王族は真っ先に城から逃げ出したらしい。


「さっすが、クズが仕える国だな」

「ホント、どこまでもクズだよね」


悪態をついているみんなは、すでに参加するという意思表示をして魔法球を受け取っていた。

私が調べたり三人に聞いた情報は伝えた。

妖精王や裁定者に関しては詳しく分かっていないため話していない。

絵になったからといって、彼らの計画にどう関わっているのかが分からないのだ。

包み隠された真実を聞いても参加することに変更はないという。

すでに参加するのが当たり前だと意識に刷り込まれているのだろう。


そんな彼らだったが、私が姿を現したときは一瞬誤解をされた。

そりゃあそうだ。

私が『ここに連れてきた三人と一緒に現れた』のだから。

ただ、部屋着で裸足だったためすぐに誤解は解けたが。


「みんな、アバター名で呼び合うことにしたの。私はマイちん。呼び捨てでいいわ。で、あなたは?」

「ああ、よろしくサブマス。私はアイリス」

「ええ⁉︎ 私、ココア。アイリスさんも参加するのー!」

「あ、ごめん。私、不参加なんだ」

「─── え?」


私の不参加という言葉に一部から声があがり、全員が驚いた表情で動きをとめた。


「アイリスさん、不参加ってあり?」

「私はここにきてすぐにこの画面が現れたから」


そう言って、妖精王だというキャラと共に表示された『あなたは病気を理由に参加を拒否することができます』のスクショをみんなに見せる。

続けて『不参加を認めます』のスクショも見せるとすんなり納得された。


「あ、ホントだ」

「残念だったね」

「巻き込まれかぁ……」


もっと「ズルい!」などと騒ぎになると思ったが、何故か受け入れられた。

思考回路に手が加えられている?

100パーセント操られていると思われるけど……

そう考えて三人を見るが、彼らは目が合うと慌ててそらした。


「魔法球、何をもらった?」

「あ、私はもらってないの」

「不参加だから?」

「じゃない?」


こうやって話をしてきても、自分たちで一方的に納得する回答を導き出していく。


「でも、なんでタブレットを持っているんだ?」

「え? ああ、私ゲーム関係はタブレットを使ってたから」

「あー、私もそうすれば良かった」

「電波繋がってる?」

「うん、何故か繋がってる」

「あー! やっぱり悔しい~」


ココアの心からの叫びに誰もが苦笑した。

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