手紙
〈八〉
蓮へ
この手紙を蓮が読んでいる頃、たぶん私はもう蓮に会えないところにいると思う。なんとなくわかっちゃうんだよね、自分のことだから。
だからまだ体が動かせるうちにこの手紙を書いています。お母さんやお父さん、蓮がお見舞いに来る前に、ちっとも喉を通ってくれない朝ご飯を横目に。
えっと、どこから話したらいいかな。考えながら書いているから上手くまとまっていなくて読みにくいかもしれないけれど、そうだったらごめんね。
まず一番最初に言っておきたいのは、私のことを小さい時からずっと気に掛けてくれてありがとう。ろくに外に出て遊ばない私と一緒にいても楽しくなかったよね。それでも一緒に居てくれて、わたしは助けられてばっかりだった。
小学校の頃、みんなが校庭で遊んでいるのにいつまでもゆっくりと給食を食べている私に付き合ってくれて、すごく嬉しかった。
林間学校とかでもずっと私のことを気にしてくれて嬉しかった。他のみんなとも一緒に回りたかったけれど、蓮がいてくれるからまあいいかなんて思ったりもしたの。
高校受験の時にすごくきついこと言ったこと、今でも悪かったと思ってる。でも私はどうしても蓮と同じ高校に行きたかったから蓮にもっと頑張ってほしかったの。まあ今では私が教えてもらう側になっちゃったけれど。
あと、文句が言いたいこともある。私が大丈夫って言っているときにまで何でもかんでもやっちゃうの、そりゃあ私は楽でいいけれど、私だって自分でやりたいこともあるんだから勝手にやらないで。
それに私、ポテチはコンソメが良いって言ってるのになんでいつも海苔塩を買ってくるの、もしかして私の話全然聞いてないのかなとか思っちゃうんですけど。
……なんかこうやって改めていろいろ書こうと思うとなぁんも出てこないんだよね。いつもはあれを言おうこれを言おうと思っているのに、全部消えていっちゃう感じ。わかる?
まあいいや、一番大事な事だけ最後に書くね。
私は蓮のことが大好き。いつからか恥ずかしくなって言わなくなっちゃったけど、昔からずっとずっと蓮のことが好きだよ。世界で一番蓮のことが好きになれる自信があったんだけどね。
……もしかしたら、この先でもっと蓮のことを好きになる人が出てくるのかもしれない。そうなったらすごく悔しいけれど、まあ仕方ないかな。
だからせめて、これだけは譲らない。蓮に初めてこれを言う人は私にさせてね。
愛してる。誰よりも、何よりも、ずっとずっと。もし届かなくなっちゃってもずっと傍にいたいくらい。もし蓮もそう思ってくれたら、私はとても幸せです。
追伸
なんか可愛く書きすぎた気がする。読み直してて滅茶苦茶恥ずかしくなったら読んだらすぐ捨てること。お願いね。
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