第16話 ニーナside (火傷を負った使用人)


 私はニーナ・プライス。実家は貧乏男爵家で父と母、そして弟がいる。私はそんな家族を支える為に働きに出た。


 出来るだけいいお給料が貰えるところで働けたらと思っていたら、まさか、公爵家で働けるとは思いもしなかった。


 勤め先はサンダース公爵家。由緒正しい御家でここで働けたら箔がつく。


 もしかしたら、いい結婚相手が見つかるかもしれない!そう心を踊らせて働き始めた。


 私が働き始めた時、すでにセシリア様のお母様はお亡くなり、後妻であるケイト様とキャシー様がもうすでに公爵家に居た。


 明らかにサンダース公爵をはじめ、ケイト様とキャシー様もセシリア様に対する態度が違った。


 前妻の子だからケイト様が邪険に扱うのはなんとなく予想はつくけど、まさかサンダース公爵までもセシリア様にあんな態度をとるとは……。


 まあ、私は雇われているだけだしセシリア様は気の毒だけど何か言ってクビになりたくないし、見て見ぬふりをしよう。


 そんな思いで日々を過ごした。


 仕事にも慣れてきて頃、セシリア様に対する仕打ちは酷くなっていった。更には使用人達もがセシリア様に対する態度が酷くなっていく。


 普通なら許されない仕打ちを使用人達もが始め、それを見て楽しむケイト様とキャシー様。そして、その2人に媚を売る為本来使えるべきセシリア様に酷い仕打ちをする使用人達。逆にセシリア様へ酷い仕打ちをしなければここの使用人をクビになる。そんな環境になってしまった……。


 だから、私もみんなと同じ様にセシリア様を虐げた。最初の頃は、こんなことしたらダメだと思いつつも、クビになる恐怖からセシリア様を打ってしまった。小さな子供を打つなんて、罪悪感に囚われる……。


 だけど、そこで私に悪魔の囁きの様な出来事が起こってしまった。


「あなた、セシリアを打ったそうね?」


 そうケイト様に声をかけられた。


「……はい」


「良くやったわ! これはご褒美よ」


 そう言って頂いたものは、貧乏男爵家では一生頑張って働いても買えないほどの宝石。その瞬間私は欲に目が眩んでしまった。


 セシリア様をたった一回打っただけで一生働いても手に入らない宝石を手にすることが出来る。これなら貧乏ではなくなるかもしれないと……。


 それからはわたしもみんなと同じように当たり前かのようにセシリア様を虐げた。多分みんなも私と同じように高価な物を貰っているのかもしれない。


 普通の善意がある人ならこの公爵家の異常に気づくだろう……。しかし、この公爵家はもう善意というものを忘れてしまっている。だから、みんなセシリア様を虐げることを辞めない。


 しかしそんな時、私に天罰が下った……。



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