第15話
あの後、火傷を負った使用人はお義母様とキャシーの前に現れることは許されなくなった。キャシーが醜くて見るのも嫌だと言った様に、お義母様も同じ反応を取った。
それをお義父様が2人の我儘を聞いてその使用人をクビにしようとした。しかし、辞めたくないとその使用人が頼み込んで2人の視界に入らない様なところで仕事をすることを約束にクビにはならないかと思った。
だけど、それを許さなかったお義母様とキャシーはギャーギャーと騒いだ。そんな醜い者はこの公爵家にはいらないと。公爵家の格が落ちるだのと言ってクビにしようとした。
私はどこか冷めた様にそのやり取りを聞いていた。まあ、火傷を負ったのはお母様の力でもあるけど私のことを打とうとした人がどうなろうが関係ないとそう思っていた。
しかし数日後、そうもいかなくなったようだ……。
「本日からセシリア様の専属の侍女になりました」
そう言って頭を下げてくる火傷を負った使用人。
「……」
「セシリア様、今までのこと申し訳ありませんでした」
「……」
「こんなに醜い手をしていますが、精一杯仕事をしますのでどうか、どうか、セシリア様の侍女にしてください。……お願いします!」
火傷を負った使用人は顔を上げることなくそのまま私の前で土下座をした。
よく見るとその身体は震えてた。私はどうしたらいいか分からなくてお母様を見た。
『セシリー、この人を許すも許さないも貴方次第よ』
……私は悩んだ。今までされたことは許したくない。あんなにみんなと同じように私のことを虐げていたのに!って思った。
だけど、火傷を負ってからこの使用人はみんなから冷たくされ虐めまでされている様だとお母様から聞いた。
それを聞いた時少しだけ可哀想だと思った。虐げられる思いは人一倍分かるから……。だから、私は……。
「……許される訳がありませんよね。あんなにセシリア様のことを虐げていたのですもの……。申し訳ありません。今のことは忘れて下さい……。私はここを……」
「いいよ。ゆるす」
「……え?」
「だから、ゆるしてあげる」
「ですが、私はセシリア様に許されないことを……」
「もう、ゆるしてほしいの? それとも、ゆるさないでほしいの?」
私が許すって言っているのに……。
「セシリア様……。ありが、とう、ご、ざい、ます!」
火傷を負った使用人は涙を流しながらセシリアにお礼を言った。
その様子を静かに見ていたお母様は私を見て穏やかに笑って頭を撫でてくれた。
そして、いつの間にかいたお父様にも頭を撫でられた。
『セシリー、あの者はお前に忠誠を誓った様だ。だから安心して信頼しなさい』
お父様が言うなら本当に大丈夫なのだろうとそう思う。
(はい!)
改めて、私の侍女のことを見て言う。
「これから、よろしくね!」
「ぐすっ、はい! セシリア様」
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