第13話


 ニタニタと笑う使用人達。今までの経験からお仕置きという名の暴力を振るわれるのだろう。その時間は必死に時間が過ぎるのを待つしかなかった……。


 ちらっとキャシーのことを見るとやはりキャシーもニタニタと笑っていた。泣いたり笑ったり忙しいね……。


 そんな事を思っていると近づいてきた使用人が私を打とうと手を上げる。


 その仕草に、私は体が固まる。視線にはちっとも怖くなかったけど体は正直で、今まで暴力を振るわれていた記憶の恐怖が私を動けなくする。


「ほら、悪い子には打たないとね!」


 痛みに耐えようとぎゅっと我慢しようとした時ーー。


『愚か者!』


 私にはお母様の怒りの声が響いた。


「ぎゃぁぁぁぁー!」


 私に手を上げようとしていた使用人の1人が凄まじい悲鳴をあげながら手を押さえている。


「「キャー!」」


 他の使用人達も悲鳴をあげる。キャシーも驚いて固まっている。


 それもそうだ、私に手を上げようとしていた使用人は私を打とうとした方の手が一瞬にして酷い火傷を負ったようだった。


「いだい、いだい、痛いよ!」


 火傷を負った使用人は泣きながら痛い、痛いと言う。


『私の娘に愚か者が手を上げるなんて! しかも、ずっとあの女の為に私の娘に暴力を振るうなんて! 絶対許さない!』


 お母様は怒り狂っていた。私の為に怒ってくれているのは分かるけど、これはまずいと思う。


(おかあさま、おかあさま!)


 私は必死に心の中でお母様を呼ぶ。だけどお母様には私の声が聞こえてないみたい……。


 優しいお母様が私の呼びかけに無視するのが悲しくなってきた。思わず泣きそうにくると。


『シア、落ち着け。それに以上怒りに飲み込まれるとセシリーも傷つける……』


 一瞬にしてお母様のことを抱きしめるお父様が現れた。お父様がお母様を落ち着かせる様に背中を撫でる。


『……』


『シア……』


(おかあさま……)


 お母様にお父様と私でもう一度呼びかける。


『……ごめんなさい。もう大丈夫よ』


『良かった』


(おかあさま……)


『セシリー、ごめんね。セシリーに悲しい思いをさせたわ……』


 お母様がしゅんっとしている。


(おかあさま、セシリーはだいじょうぶだよ! だっておかあさまが、おこったの、セシリーのためでしょう?)


 確かに少し悲しかったけど、お母様が怒ったのは私の為だもんね!


『……セシリー! ありがとう』


『さて、この状況はちょっとまずいな……』


 周りは今の出来事に騒々しい。痛いと言い続けている使用人。その使用人を心配する事なく、突然火傷をした使用人を恐ろしい物でも見ているかの様な視線で見ている他の使用人達。キャシーは何が起こっているのか理解できない様だ。


『ふむ、少し細工をしようか』


 お父様がそう言うとキラキラと何かが降ってきた。






 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る