第5話
私は夢を見ていた。
それは、もう楽しい夢だった。
綺麗な景色の中、私はピクニックに来ている様だった。それに、お母様が居て、お父様が居て、周りには可愛い動物さんもいて、不思議なことに精霊さんと思える存在もいた。
楽しい!お母様とお花の冠を作ったり、お父様が抱っこしてくれて歩いてくれたり、動物さんと精霊さんと遊ぶのも楽しい!
ここには私を虐めるあの家族は居ない。
この夢から覚めたくなかった。
でも、私を現実世界が呼んでいるみたい……。
悲しいけど起きなきゃ……。
そう思うと夢の中から覚めた。
目を開けたらまだ空は薄暗く朝日が登る前だった。周りを見てもお母様は居なかった……。
やっぱり昨日のことは夢だったのかと思い始めた時……。
『おはよう、セシリー。いい夢は見れたかしら?』
優しいお母様の声が聞こえた。
先程には居なかったのに私のすぐ隣に居た。そして頭を撫でてくれる。
「おかあさま!」
『あらあら、セシリーは朝から甘えん坊さんね』
嬉しさのあまりお母様に抱きつく。
よかった!おかあさま、ちゃんといた!
『セシリー、おはよう。お父様にも抱きついてもいいぞ!』
お母様の隣にお父様も居た。だから私はお父様にも抱きつく。
「おとうさま!」
『……なんて可愛いんだ!』
よかった!おとうさまもちゃんといてくれた!
私は嬉しくてお母様とお父様のお顔を見ながらここ一年見せてなかった笑顔で挨拶をする。
「おかあさま、おとうさま、おはようございます!」
『ふふっ。おはよう、セシリー』
『ああ、おはよう』
お母様もお父様も私のことを愛おしそうに見つめる。
傷ついた心が癒されていく様だった。
『それにしてもセシリー。貴方、朝起きるの早く無いかしら?』
そう、まだ朝日は昇っていない。こんなに幼い子がこんな時間には起きるにはおかしい……。
「だってはやくおきないと、すごく、おこられるから……」
『……何ですって』
「それに、起こしに来てくれる人が起きてないと叩くの……」
『『……』』
「それでなんかいもたたかれて、ないたときは、あさごはんたべられないの……」
そう、これはキャシーに部屋を取られたあたりから始まったこと。
セシリアを起こしに来る侍女はケイトに媚を売っている侍女。ケイトはセシリアを虐めると喜ぶ為に媚を売る為に身の程も弁えずにセシリアのことを虐める。
それを躾と称して公爵でもあるお父様だった人は黙認している。
誰も味方など居ないここでは、言いなりになるしか自分を守れない。
だから、自分を守る為に早起きをしなければならなかった……。
『あやつら……』
『セシリー……』
私の話を聞いたお父様は怒りを露わにし、お母様は悲しそうなお顔をしてから、私のことを抱きしめてくれた。
『セシリー、これからはお母様が起こしてあげるから、もう少し寝ていて良いのよ』
「でも……」
『あやつらのことなど怖く無いぞ?』
お母様とお父様はこれからはゆっくり寝ていても良いと言ってくれます。
本当は少し怖いけど、お父様が怖く無いと言ってくれたから明日からはもう少し寝れると思う。
「わかった! ありがとう、おかあさま、おとうさま!」
2人は穏やかに笑っていた……。
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