第4話


 光が集まって、現れた男の人は幼い私にも分かるほどに美しい、この世のものとは思えない程の綺麗な人。


 私はその人から目が離せなかった。その人も私のことを見つめる。


 私のことを見つめる瞳は確かに私への愛に溢れていた。


『はじめまして、セシリー。我が愛しき娘よ』


 初めて聞いた声は、何故か心地よく安心出来た。


 このひとがおとうさま?でも、いまのおとうさまは……?


 私は混乱していた。お母様は目の前のとてつもなく美しい男の人が私の本当のお父様だと言う。でも、それなら今までのお父様はお父様じゃ無いの?


 助けを求める様にお母様を見る。


「……おかあさま」


『ごめんね、セシリー。混乱するでしょう。幼い貴方にこんな事を言うなんて……。でも、あの男の事だからこれから貴方は大変な目に絶対合う。その時に貴方を守るために今、残酷だけど真実を言うの。だけど今は、この人が本当の貴方のお父様と言うことだけ分かって頂戴』


 お母様が私に真剣に言ってくる。幼い私にはこれから起こる大変な目は何かは理解出来ない。


 でも、お母様が私のことを思って言っていることは理解出来た。私のことを無視する今までのお父様とは違う。私のことをちゃんと思って言うことを私は信じることにした。


「わかりました、おかあさま」


『セシリー、ありがとう』


 お母様にそう言って改めて美しい男の人を見る。


 このひとがわたしのほんとうのおとうさま。このおとうさまはちゃんとわたしのことをみてくれるかな?


『セシリー……』


「おとうさま」


 私にお父様と言われた美しい男の人は嬉しさが爆発した様に満面の笑みになった。


『セシリー! ああ、我が愛しの娘よ! やっとお前の父だと、お前の前に現れることが出来た!』


 そう言うとお父様は私を抱きしめてくれた。私はお父様と言う存在に抱きしめられたことは久しぶりだった。


 私は恥ずかしいやら、嬉しいやら感情が忙しい。でも、それ以上にお母様に抱きしめられた時と同じ位に安心する。ほっとする。ここは安全な場所だと自然に思う。


 その様子を見たお父様が言った。


『セシリー、今はまだダメだがいずれお前も本当の姿で過ごすことが出来るだろう。その時まで我とパトリシアがセシリーのことを守ろう』


 お父様がそう言うとお母様もまた抱きしめてくれる。私を真ん中にお母様とお父様に包まれている様で幸せを感じる。


 ここ一年感じられなかった幸せが……。


『セシリー、今日はもう寝なさい。お母様とお父様がついているから安心して眠りなさい』


 そうお母様が言いながら私の頭を優しく撫でる。その心地良さにまぶたが落ちていく。


 だけどまだ、寝たくなかった。今寝たら、もしかしたらお母様とお父様は居なくなっているかもしれないと。これは私が見た夢だったらと、そう、思ってしまう。


「……お、かあ、さま。まだ、……ねたく、ない」


 お母様は私の不安な気持ちが分かった様です。


『大丈夫よ、セシリー。お母様とお父様は居なくならないわ』


『ああ、安心して眠れ……』


 お母様とお父様の優しい声を聞きながら私は眠りについた……。




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