第2話
それから間もなく私の地獄は始まった。
まだ、お母様が亡くなってから一年は経ってないから私とお父様は喪に付していた。
だからまだ、お父様とお義母様は婚姻はしていなかったけど公爵家の中ではもう公爵夫人としての態度をお義母様は取っていた。
最初は謙虚な態度を取っていたお義母様だったが自分の地位を理解すると好き勝手にし始めた。
まずは豪華なドレスや宝石を身に付けるようになった。
そして次は自分の娘であるキャシーを私より上に見せたいが為に私から物を奪っていった。
それを見ていた義妹も母であるケイトを真似して私の大切なものを奪っていった。
「おねえさまのおへやひろくていいな〜」
「そうね、セシリアちゃんには勿体無いわね……」
これはお父様がいない時の会話。そして……。
「セシリア、今日からお前の部屋はキャシー物だ」
「!? おとうさまなんで? あのおへやはおかあさまとのおもいでがいっぱいなのに……」
私がそう言うとお義母様は悲しそうに演技をする。
「セシリアちゃん、まだわたしのことを受け入れてくれないのね……。悲しいわ……」
「おかあさまかわいそう……」
「こら! セシリア! もうお前のお母様はケイトなんだ! どうして傷つけるような事を言うんだ!」
お父様は気づいてない。そのお父様の言葉に私が傷ついたことに……。
「……ごめんなさい」
「もうお前の物は他の部屋に移してある。今日からその部屋がお前の部屋だ」
「……はい」
私は泣きたかった。でもここで泣いてもお父様に怒られると思った。それにもうお父様は私の味方をしてくれないと幼心にそう思った……。
それから約一年うちに状況はさらに悪化した。私の部屋を取ってからは益々酷くなった。お気に入りのドレス、アクセサリー、おもちゃもいっぱい、いっぱい、キャシーが欲しがればおのずとキャシーの物になる。
私がやるのを拒めばお父様から怒られ、姉なのだから我慢しろと言われる。
それなのに新しい物は買ってくれない。奪われるだけ……。貰えるのはキャシーが飽きた物のお下がり。だけど私が持つとまたキャシーは欲しくなるのか奪っていく。
もちろん、そんなお義母様と義妹の態度が気になった使用人達はお父様に訴えてくれたこともあった。私に優しくしてくれる人もいた。でも、私に優しくしてくれた人や訴えた人は次の日には居なくなっていた……。
すると私に優しくしてくれる人など居なくなってしまった。
そんな現実にもう限界だった。幼い私には耐えられなかった。心が壊れそうだった。だから1人で毎日寝る前に静かに泣いた。
誰も気づかないように……。
「ヒック……ヒック……ヒック……」
どうしておとうさまはわたしのことをちゃんとみてくれないの?どうしてあの2人のことばかりみかたをするの?どうして?どうして?わたしのことがきらいなの?
心の中で同じことを繰り返し思う。
「ヒック……ヒック……ヒック……」
『セシリー、もう泣かないの。お母様が居るわよ』
突然頭を撫でられる感覚と懐かしいお母様の声。
慌てて俯いた顔を上げるとそこには優しく微笑みながら私を見つめる大好きなお母様がいた……。
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