わたしのことを虐げる偽の家族なんて知りません。だってわたしにはいつも優しいお父様とお母様がついていますもの!
神月レスト
第1話
「セシリア! お前は妹であるキャシーを幼い頃からずっと虐めていたな! キャシーはずっとお前を庇っていたけど、やっと勇気を出して打ち明けてくれた! そんな悪女のお前とは婚約破棄だ! それにお前は国外追放だ!」
目の前でギャーギャー騒いでいるのはわたくしの婚約者だったコンラッド王太子殿下。その隣に寄り添って居るのは義妹のキャシー。わたくしを見て怯えているような態度をとっていますが、口元は醜く笑っているわ。
そんな2人を冷めた目でわたくしは見ます。
しかし、わたくしにとってあのアホ殿下と婚約破棄出来たのは嬉しいことです。
やっと解放される!
「婚約破棄、承りました。国外追放も承知しました」
そう言い、わたくしはこの会場を後にしようとする。
すると、コンラッド殿下は騒ぎ出す。
「まて! お前ような罪人は捕らえてから国外追放だ! 捕えよ!」
そう言って騎士達がわたくしに向かって来ますわ。しかし、わたくしには恐怖などありませんわ。だって……。
『愚かな人間達よ。それ以上我が娘に手を出す事など許さぬ!』
『本当にわたくしの可愛い娘に対しての仕打ち、絶対に許さないわ〜』
わたくしは笑みを漏らした。
わたくしはセシリア・サンダース。ヴェルデ王国、サンダース公爵家の長女としてこの世に生まれ落ちました。髪はお父様と同じ金髪、瞳はお母様と同じ緑の瞳。顔立ちは精霊姫と言われるお母様に瓜二つと言われるほどにお母様に似ていますわ。
わたくしの両親はお父様の熱烈にお母様を求めた上に決められた婚姻でした。
わたくしが3歳の時まではごく普通の貴族の家庭でした。
それなりに幸せだったと思います。両親の愛を感じながら暮らしていました。
しかし、その幸せもわたくしが3歳の時まででした……。
3歳の時にお母様が亡くなってしまった……。お母様はわたくしを産んだ時に体がか弱くなってしまった様でした……。
わたくしは悲しくて悲しくて仕方がありませんでした。お父様もお母様が亡くなってすぐは悲しそうにしていました。
ですが、お母様が亡くなってから1ヶ月経った頃にそれは突然起きました。
「お嬢様、公爵様がお呼びでございます」
「おとうさまが?」
「はい」
幼い私はお父様に呼ばれたことに不思議に思った。
だっていつだってお父様は私のことを呼ぶよりわたくしの所に直接来てくれるから。
それでもお父様が呼んで居るから私は喜んでお父様の元に向かった。
しかし、そこで待ち受けていたのは幼い私には受け入れたくないものだった。
「おとうさま!」
「ああ、来たか。セシリア、今日からお前のお母様になるケイトと妹のキャシーだ。仲良くしなさい」
「セシリアちゃん、今日からよろしくね」
「おねえさま、よろしくおねがいします」
新しいお義母様と義妹は私にニッコリ笑ってきましたが幼い私には理解したくありませんでした。
なぜおかあさまがなくなってすぐにあたらしいおかあさまができるの?それにいもおとって?
私が固まっているとお父様は少し怒ったようにわたくしに言う。
「セシリア、ちゃんと挨拶をしなさい」
お父様はそれまでに私に見せたことのない様な厳しいお顔をしていました。
「……よろしくおねがいいたします」
3人は笑っていたけど私は笑うことが出来なかった……。
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