あの日の過ち
ここから、アタシとサチさんの回想が始まる。
「なあ武者小路。あたしやナツが、オマエが言うところの下品になったのは、あたし達のせいじゃないんだよ」
「そうそう。元々アタシ達は心清らかだったんだよ」
アタシはサチさんの話に対し、心からの同意を述べる。
「ああそうだ。あたし達が小学生の頃、チンコを出してわざと女子に見せて喜ぶバカな男子がいっぱいいてさあ」
「アタシ達の野球チームには、結構女子がいてね。そりゃもう、みんな迷惑してたんだ」
「そこで、あたしとナツと、もう一人のヤバイ…… いや、仲間思いの女子3人で、
「そうそう、イッケーですよね」
「オマエ、意味わかってないだろ? まあいい。それで、アタシ達はしつこくチンコを見せてくる男子に対して、『やだ〜』とか『もお〜』とか言いながら、機会が来るのを虎視眈々と狙ってたんだ」
「そう、タンタンですよ。そんなある日、ついにその機会が来てさ——」
「おいバカナツ! それはあたしに言わせろよ。そう、そして、待ちに待ったその瞬間がやって来たのさ! そのエロ男子が、チンコを出した勢いのまま、立ちションを始めやがったんだ!」
「クックック」
「あたし達は隠し持っていた木の枝を取り出して、そいつのチンコをメッタ突きにしてやったのさ!」
「ソイツってば、急にオシッコ止められないもんだから、チンコ出したまま逃げ回ってやんの」
「放尿中はチンコしまえないだろ? だからそいつのチンコは、あたしらが持つ鋭利な小枝の格好の標的になったってわけさ」
「サチさんの木の枝なんて、先の方メッチャ尖ってたしね」
「逃げ回るソイツのチンコに、あたし達は容赦なく、正義の小枝をお見舞いしてやったねえ。そう、あれは性戦、いや聖戦だったのさ」
「ソイツがあちこち逃げ回るもんだからさ、アタシ達、結構ソイツのオシッコがかかって、そりゃもう、大変だったんだから」
「ああ。あの後、野球の練習サボって、女子3人で銭湯に行ったな」
「その後ファミレスに寄って、フルーツポンチをフルーツチンポに見立てて、また、めった刺しにして遊びましたっけ」
「「あー、楽しかったなー」」
ここで、今まで黙って聞いていた、あきれ顔のルイが口を挟む。ここから、ルイとサチさんとのやりとりが続く。
「ちょっと…… 二人は楽しかったかも知れないですけど、あの後大変だったんスからね。股間を押さえて泣きじゃくる男子の先輩を見た監督の顔。今でもはっきり覚えてますよ」
「ああ。その後ソイツは、チンコ専門病院に通うことになったんだよな。まあ天罰じゃネエか」
「ちょっとサチさん、そんな病院ありませんって。泌尿器科ですから。その男子の先輩、外傷もさることながら、途中で無理にオシッコ止めたせいで、膀胱炎になっちゃって……」
「いいんだよ! 小学生だからチンコ専門病院で!」
サチさんがご機嫌な様子で声を上げる。
「まったく…… サチさんが変な病院の名前考えるもんだから、その男の先輩のアダ名、チンコ専門病院になったんですからね」
「いいんだよ。その代わりあたしも、『チンコ血まみれ悪魔』って言われたんだから。おあいこだよ。それにしても、あたしにチンコなんてないのに、ヒデェ話だよな」
やはりご機嫌な様子で語るサチさん。
「その男子の先輩、OBとして去年、シニアの練習を手伝いに来てくれたんスよ。その時
「そうか! 新情報ありがとな、ルイ!」
サチさんはやはりご機嫌だ。
「ハァー…… それから、サチさん達のせいで、あの後『女子にチンコは見せません』っていう、変なルールが出来たんっスからね。これ、野球の練習が始まる前に、『一生懸命練習します』とか『最後まであきらめません』とかと一緒に、大声で言わされるんですよ? ちょっとはコッチの身にもなって下さいよ……」
「そんなの、チンコ出すヤツが悪いんだよ! まあでも、それ以来だよな」
「ええ、それ以来ですとも」
サチさんの言葉に続くアタシ。
「何がそれ以来なんスか?」
「「それ以来、アタシ(あたし)達は、チンコの話をするのが大好きになったんだ!」」
「ハァー……」
ルイの
「まあ、そういうわけだ、武者小路。あたしやナツが下品なのは、仕方のないことだということがよく理解できただろ?」
「は、はい…… ご配慮感謝いたし…… ます?」
「もう、アッちゃん大丈夫だよ」
アンズが笑顔で武者小路さんに話しかける。
「この話、私、中学の頃、何回も聞かされたんだから。アッちゃんもそのうち絶対慣れるって。今日はルイ君? のおかげで、謎が少し解けたぐらいだし」
「ん? 謎ってなんだ?」
サチさんがアンズに尋ねる。
「その…… ナントカ専門病院って、架空の病院だと思ってたんですけど、泌尿器科のことだったんですね」
「ああ! 専門の病院に行ったのは事実だとも! でもチンコ専門病院の方がオモシロイからいいんだ!」
胸を張って答えるサチさん。そして——
「まあ、結論として、あたしやナツが下品なのは、すべてリトルにいた男子が悪いってことだ。下品だと軽蔑するなら、リトルにいた男子を代表して、そこのルイを軽蔑してくれ」
「ちょ、ちょっと、なんでそうなるんスか?」
慌てるルイ。そこに武者小路さんの一言が襲いかかる。
「やっぱり、ナツさんの着替えをのぞいていたのですね……」
「えーー! これだけチンコの話聞いといて、注目するのそこなの!?」
憐れ、涙目のルイ。
この後、ルイの着替えチラ見事案について、我々は論議を深めることになった。
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