第二十二話

 言葉が理解できるのとできないでは、状況の変化に大きな差ができるものだと痛感した。今日此頃きょうこのごろ

 あのときの女騎士とも会話ができれば……、戦闘することなくことを終えれたのかもしれません。今となっては、いい思い出の一つです。

 言葉が理解できていなかったからこそ、お陰様で面白い状況に巻き込またので。あれはあれで、O.K.としておきます。


 …………。


 …………、…………。


 ちょっと言葉の話は一旦、倉庫に押し込めてじょうを掛けて一生取り出すことができないように鍵は、宇宙そら目掛けて放り投げて、大気圏で燃えされーーーーー!!!!! です。

 私の言っている意味が分からない? 今は分からなくても問題ないです。分かるときがきたら、分かりますから。


 …………、…………、…………。


 いやはやなんともです。

 前の世界で、"想像そうぞう"され"創造そうぞう"されていた"獣人じゅうじん"の姿は。"当たらずといえども遠からず"なのです。

 これは仮説なのですが。私と同じように、この異世界に転移された人がいて。そして、前の世界に帰還でき。獣人のことを壁画に描いたり、書物に書いたりした可能性が高いと私は考えています。

 このことを論文にして学会に発表しようと思っています。

 帰れればの話ですが……。

 論文のタイトルは、"獣人は思っているよりも人間"です。獣人なのだから当たり前だろうと思った方、その通りなのです。

 その通りなのがとても重要なことなのですよ。分かりますか!

 前の世界では獣人という存在はあくまでも架空の存在です。それなのに獣人の特徴がしっかりと捉えているということや。獣人に関してのその他の細かな類似点が多々あることなどが。私の仮説の証拠になるではと考えいます。えへん! です。


 ながながと前置きが長いから話を先に進めろよ! と言っている方。ながながと前置きに付き合っていただいてありがとうございます。

 では、これで私の獣人に関する論文発表を終了といたします。

 ご清聴せいちょうありがとうございました。

 では、また、どこかでお会いできる日を楽しみにしております。

 天之高神あめのたかかみ摩志常ましとこ

 

 全然話の意味がわからない。


 それはですねぇー、……。私が現状から目を逸らしたいからなのです。


 …………、…………。


 私とある人物が場所に立っています。

 大きな開けた場所で、身を隠すに丁度いいゴツゴツとした岩が配置されており。池と言いたいけど、見るからに小さな湖。林なのか森なのか分からないので森林にしておきます。

 あと、そこら辺には動物ぽい骨や人間ぽい骨、そして知らない生物ぽい骨。そして私の嗅ぎ慣れた血肉の匂いが充満しています。

 よく映画やアニメやゲームなどで戦うときに使用される場所です。闘技場とかコロッセオという名称で呼ばれる。ろくなことをする場所ではありません。

 実際、普通このような状況下におかれたら、血湧ちわ肉躍にくおどるです。

 あ! たぶん、説明不足のため。皆さんが想像されている闘技場、もしくはコロッセオと少し違います。

 円形に巨大な壁て囲まれており、観客席やお偉方専用の特別席など設けられてあります。それだと想像通りの闘技場じゃないかと思ったでしょう! ちょっとまったです!

 そう! この闘技場は広さが桁違いに広いのです!

 よく広さで例えに使われる"東京ドーム"、なんと"十二個分"です! え? 微妙にイメージしにくいと。えーっとですねぇー……。あれだ! 某有名、東京夢の国が丸々一つそのまま入る面積です。

 闘技場の基礎部分は自然環境をそのまま利用し、闘技場の範囲を決めるために人工的に作られたマーナガルムのサモエド姿よりも高い壁で取り囲むように設計されています。

 その強大な壁の厚みを工夫して観客席にしてあります。そして壁よりも高い位置には、より人工的に作られている場所があります。お偉方専用の特別席、VIPヴィップルームです。

 この闘技場はただ広いだけありません。

 一対一の決闘から多対多の大規模戦闘ができるうえに。自然環境を利用しているために、地の利などの戦術・戦略などの考慮した頭脳戦まで想定して戦う必要がある特殊な闘技場。

 私の前の世界でなら、戦闘模擬訓練施設と言った方がいいのかもしれません。

 

 …………、…………。


 こんな最高の舞台に立っていることに、私の脳からアドレナリンがドバドバと出過ぎています。

 そんなに興奮しているなら? "私が現状から目を逸らしたいからなのです"って語った意味が分からない? と。確かにその通りです。

 ですので! 伏線を回収します。

 その理由は、私が"ちょっと言葉の話は一旦、倉庫に押し込めて"と語ったところが重要なのです。

 今の私はこの異世界での言葉がハッキリ、クッキリ、聞き取れます。


「死ねぇー!」「殺せぇー!」「八つ裂きにしろー!」「キャー!」「カッコいいー!」「抱いてぇー!」

「…………、優位性って。…………、大事、だわ」


 私、今、完全アウェイなのです。

 飛び交っている言葉からして殺意の塊の罵声と黄色い声援がスクランブルエッグ状態になっていました。ぐちゃぐちゃですと言いたいだけです。

 言葉が理解できなくても仕草などからある程度、相手の意図は理解できます。が! ちゃんと言葉が分かると、私に向かって放たれる罵声が心を痛めます……、私も泣いちゃうぞ!

 というのは冗談です。

 まさか罵声の中に黄色い声援も混じっているのには驚きです。「抱いてぇー」は、言い過ぎです。

 まぁ、罵倒は全て私に向かって飛んでます。黄色い声援は私と対じしている人物に飛んでます。

 この罵声の嵐! 異世界このせかいの人間どんだけ、獣人に嫌われているのと歓心しました。

 それとは別の意味でも私は関心させられています。

 私の知っている獣人の概念が崩されていることにです。

 罵声や黄色い声援を放り投げこんでいる姿は皆さんが頭の中に映像化しているイメージとはかけ離れています。普通に人間です。

 本当に申し訳ないのですが。表現としてなんと説明したらいいのか……、本当に……。パっと見は、前世界の外国人にしか見えません。日本に観光に訪れている外国の人にしか見えないのです。

 心の中で、獣人の意味なくねぇ! と葛藤していました。

 よくよく、考えてみれば。マーナガルムも人間の姿をしていると、普通に外国人にしか見えないのです。ハティスコルもエンお姉さまもセガラもです。

 異世界に来たのだから、小説やアニメやゲームのようなファンタジー世界を楽しみにしていたのですが……。もしかしたら……、その期待は大きくハズレてしまうのでは……。


 …………。


 と、前振りをしておいてと。

 マーナガルムに訊いたのですが。獣人は成人すると普通の人間の姿になり、戦闘時に獣人化するそうです。

 プリシエは身体の大半を毛で覆われているので、まだ、子ども。未成年になります。

 普通の人間の姿をしているだけで、獣人なので人間の姿の状態でも高い身体能力を発揮できるらしく。この世界に存在している一般的な人間では、太刀打ちできないと話していました。

 変身するというのは、王道ファンタジー世界の常識ですしね。ここでなんとか、ファンタジー要素を回収できました。


 そうです! 言い忘れていました!

 私がどうしてこんな闘技場で罵声を浴びせられる必要があるのか? という説明していませんでした。

 

 時間を巻き戻しますねぇー。


 …………、…………。


 セガラ王とその娘であるプリシエと顔合わせが終わったあとでした。

 私に対して、マーナガルムは説明口調で舞闘会する理由を話してくれました。

 

 それはこの異世界では獣人と人間は、あまり……、非常に仲が良くないとのこと。

 まぁー、そうでしょうねぇー。前の世界でも、同じ種族同士でも仲が良かったことはなかったので、この異世界で獣人と人間という。より特殊な関係どうしが逆に仲が良かったら怖い……。

 と、いうのもありました。が!

 獣人と人間が、仲が良かったら……。私の生きていた前の世界って、もの凄く低俗な者たちが住んでいる世界になってしまう……。

 まぁ、私が壊して、さぃ……。この話は今、関係ないかな。また暇なときに。


 私を国民に認知させることは、『破邪の選定者ドラゴン』である。マーナガルムにとってそう難しいことではないらしい。

 そうだろう。この国の王様であるセガラよりも上の立ち位置にいるのだから当然だ。

 マーナガルムやセガラ王の立場から私を無理矢理に国民に認知させると。国民感情的を逆なでするということはないそうです。これはあれですね……、黒でも白と言えば、白になるという。弱肉強食の世界ならではです。はい。

 ベストな方法として。後々のことを考えて、私、自身の力で国民の認知を獲得した方がいいのでは? という結論が。三馬鹿姉弟さんばかきょうだいとセガラ王の総意そういになり。


 お披露目会こと舞闘会で、私の力を国民に見せつけろ! てきな展開になったのです。

 

 なに!? その男なら口で語るより、拳で語れてきな、のり。一昔前の少年誌の熱い展開の主人公じゃないんですけど! ワ・タ・シ。

 一応……、クールビューティーキャラって設定なのに……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る