第十三話

 遠い目をしていた摩志常ましとこだったが、マーナガルムの巨大肉球、ポン、ポン、で意識を取り戻していく。

 どうしても、摩志常の心の中では、『ドラゴン』とは。

 トカゲを大きくして、羽を生やして、口から炎や冷気を吐き出し、人間の言葉を喋り、伝説上の生物で、某有名ゲームタイトルで使用されている、あのドラゴンのイメージであって欲しかった。

 趣味である、アニメやマンガやゲームなどで登場している。あのが、この異世界で見れるという期待があった。

 それが、、ですと言った存在が、巨大な、、では、流石に納得できなかった。

 しゃがみ込みと、地面を指でなぞりながら、摩志常は。


「あのね……、こんな感じで羽が生えてて……、顔がね、トカゲに似ていてね……、口からは炎を吐いたり……、冷気を吐いたりしてね、あとは……ね……」


 ドラゴンについて解説しながら自分の世界に登場するドラゴンを地面に描きながら、現実逃避に入り込み始めていた。


 その状態をしばらく観察していた、マーナガルムは。

 摩志常のその状態を見ているのが、不憫ふびんで仕方なかった。

 そして、今の摩志常を立ち直らせる答えをマーナガルムは知っていた。


「あれだ――摩志常。たぶんだがな、お前が思っている感じの竜人族ドラゴンは、この世界に存在しているぞ。安心しろ」


 地面にドラゴンを描いていた摩志常の耳に、言葉が飛び込んできた。

 次の瞬間。

 振り返って立ち上がりると、マーナガルムが鋭く尖らせた毛を回避した時よりも、敏捷な動きで横になっている。マーナガルムの腹部を背もたれクッションにしながら。

 摩志常は興奮のあまり、声を上擦りながら。


「トカゲを大きくして、羽を生やして、口から炎や冷気を吐き出し、人間の言葉を喋り、伝説上の生物で、某有名ゲームタイトルで使用されている、あのドラゴンよ!」

 

 自分の知っているドラゴンとある程度認識が一致しているのだが、摩志常の話しているなかに一つだけ、気になることがあった。


「摩志常よ。某有名ゲームタイトルで使用されているというのは、よく分からんの、だが……」 

 

 その問いに対して、嬉しそうに微笑み返しながら。


「気にしないで。それよりも、マーナガルムの言っている、ドラゴンの事を詳しく教えて!」

「うむ。摩志常の知っているドラゴンとは……、この世界では『竜人りゅうじん族』と呼ばれている種族の事だ。その種族は確かに、トカゲを大きくして、羽を生やして、口から炎や冷気を吐き出し、人間の言葉を喋り、この世界でも上位の生物種族として、崇め恐れられいる」


 摩志常は、うん、うん、とうなずきながら楽しそうにマーナガルムの話を聞いていた。

 その光景は、第三者が見れば。

 子供が親に絵本を読んでもらっているときのようだった。

 摩志常の反応の良さにマーナガルムも、徐々にテンションが上ってきており、語り口調になっていた。


「摩志常よ、覚えておくのだぞ。竜人族、摩志常が言うドラゴンなのだがな。二種族、存在するのだ。一つは――『神の使いゼファー』と呼ばれる種族。もう、一つは――『魔の兵器ダーク・ロード』と呼ばれる種族だ」


 マーナガルムの語り口調が上手い影響もあり。

 摩志常の興奮を最高潮に達しようとしていた。

 フン、フン、と荒い鼻息をしながら好奇心を踊らせながら、マーナガルムの腹部クッションに背中をもたれながら、両手両足をジタバタと暴れさせながら。


「くーーーーーぅーーーーー!!!!! 神の使いゼファー魔の兵器ダーク・ロードって、なに! この中二心を刺激する設定は! マーナガルム! もっと、もっと、そのところを詳しく話して頂戴!」


 いつのまにやら、マーナガルムも本人も摩志常のテンションに引っ張れ、テンションが、ハイテンションになっていた。


「長い話にながるが、大丈夫か? 摩志常よ!」

「オッケーよ、マーナガルム!」


 話の噛み合わなかった二人が、初めて話が噛み合った瞬間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る