第十四話

 空から降り注ぐ太陽の光を浴びながら、吸血鬼きゅうけつきドラキュラの気分を味わい。周囲からは、若々しく明るい挨拶の声が聞こえてくる。

 若々しさで言えば、私も若いピチピチの中学一年生です。ピチピチは死語!? ひめママは、今でも普通に使いますよ。

 私は、校門前に立っています。

 校門前の横の壁に黒い上質な石には、『誰時たれどき学園』という文字が彫り込まれています。

 それなりに伝統ある学園らしい……、いろんな意味でも。

 いい意味では伝統ある学園であり、悪い意味でも伝統ある学園である。

 いい意味では、超有名な、お嬢様学校というハイブランド力があります。お金持ちさんのお嬢様たち、ご用達ようたしの学園です。

 悪い意味では、ママたちが学んでいた学園でもあります。感のいい方ならお気づきと思いますが。

 ――異能者たち、ご用達の学園でもあります。


 茉莉花まりかママと私は、幼少期からこの学園に通っています。ひめママは、茉莉花ママが高等部に上がったときに、関西の学校から天后てんこう……、あ! 漢字間違えしました転校てんこうして来ました。

 今では仲良く一緒に住んでいますが。ママたちは高等部のときは、敵対関係ライバルになります。

 私が立っている校門から真正面に見えるのが初等部の校舎になります。その左側奥にあるのが中等部の校舎になります、私が向かわなくて行けない場所です。そして、初等部の校舎を真正面から見て右側奥にあるのが高等部の校舎になります。

 そうそう、幼等部と大学部は、ここから少し離れた場所にありますよ。 

 初等部、中等部、高等部の校舎で、一番、新しい校舎は高等部になります。

 高等部校舎が壊れたからです。

 え! 伝統ある学園なだけに、老朽化で壊れた? いえ、違います。

 ママたちが暴れて校舎を破壊したからです。

 茉莉花まりかママとひめママが、最終決戦をした場所だからです。

 どちらも血の気が多いタイプなので、媛ママが高等部に転校初日から茉莉花ママに絡んで、それを茉莉花ママが絡みとってしまい。

 深夜の高等部用の運動場で戦うことにし。その余波で校舎が吹き飛ぶという大損害を与えてしまったのです。

 そして、ママたちの担任教師に、ボコ、ボコにされて。校舎の再建費用を払わすために、担任教師が副業するために作った会社。

 有限会社・『黄昏たそがれ』で働かされることになったのです。

 今、現在はママたちが担任教師から会社経営を引き継いでいることになります。


 そんなことを二人が家で晩酌ばんしゃくしながら、私に話してきたことを思い出しながら。左側奥に向かって重い足取りで進んでいきます。

 心は校門、出口に向かっていますよ。


 中等部の校舎に入ると、下履きから上履きに履き替える場所、なんて言うんだっけ? 脱靴場だっかじょう、いや、下駄箱げたばこ、いや、昇降口しょうこうぐち……。

 ややこしいなぁーもぉー。呼び方はあとでどれにするか考えておくことにします。

 とりあえず、下履きから上履きに履き替える場所で、ヒラ、ヒラと蝶が舞っています。見えそうで見えません。さすがは、お嬢様学校! 絶妙なスカートの長さです。

 上履きに履き替えるどさくさに紛れて、しゃがみ込んで覗くという手段を使えば見えると思います。でも、あえてそれはしません。それは、私の中でのプライドが許しません。

 あくまでも、"見る"、のではなく、"見えた"、ということが大事なのです。

 私がこの学園での最大の楽しみです。

 今日も見えなかったので、家に帰ることにしようと思います。


「お、おはよう、ご、ございます……。天之高神あめのたかかみさ、さん……」


 と、一人の女子生徒が挨拶してきた。

 それは、挨拶というよりも、呟きに近い声だった。


「お、おはよう、ご、ございます…………。…………、…………。」


 私は、にこやかな笑顔で挨拶を返したつもりだった……が。顔の表情は完全に痙攣し、苦笑いの顔をしていた。

 私が、"なぜ"、苦笑いをしているのか女子生徒には、すぐに分かったのだろう。


「な、中原なかはら……、と、智美ともみです……」


 中原さん、私の名前を噛まずに言えたのに、自分の名前を名乗るとき。どうして、そんなにも、しどろもどろなのだろう。

 と、私は考えるが答えは簡単だ。

 いい言葉で彼女を表現するれば、大人しい。悪い言葉で彼女を表現すれば、気弱な

 私のクラスメイトで、私の後ろの席に座っています。

 性別は、…………。言わないでも分かると思います。背丈は私と同じぐらいです。髪の色素が薄いために、茶色に見え、髪の長さは肩近くまで伸び、くせ毛なのだろう外に少しカールしています。

 メガネのレンズ越しに見える彼女の瞳は、輝きが失われているようだった。


 しかし。

 

 私は、今、彼女以上に瞳の輝きが失われている。

 背丈は同じだが……、胸部のサイズがちょっと大きい。中学一年生でもこの大きなになるものなのだろうか? 私の女性ホルモンの出る量が少ないのだろうか? それとも、ママたちが言う刺激量が足りないのだろうか?

 中原さんにいつか聞くことにしよう。"どうしたらそんなに大きな乳に育つんですか? "、と。


 教室に、私が入ると。

 教室の中にはクラスメイトたちが楽しそうに会話していた。

 が。


 …………、…………。


 急に沈黙になる。

 私が原因なのか? と思う人がいるようですが。クラスメイトたちの視線は、私の後ろにいる中原さんに集中していた。

 お嬢様だから、外見と中身が一致しているとは限らない。

 ヒエラルキーの頂点に近いために、余計にたちが悪い。ヒエラルキーの頂点の中でもヒエラルキーは存在するからです。

 中原さんは、中等部からの外部入学なのです。外部入学が問題というではなく、有名な家柄でもなく、富裕層な家庭でもなく、ごくごく普通の一般家庭からの入学だからです。

 世界はそんなに美しくありません。


 私の席は教壇の一番前の席です。その後ろの席にスカート押さえながら、中原さんが座ります。私は普通に座ります。だって、私はスカートを履いていませんから。

 ズボンなので。

 スカートは寒いうえに、激しく動くと下着が見えてしまうので、急に戦闘する必要になったときに気になって仕方ありません。

 ママたちは、「下着なんて見せてなんぼのもんじゃー」「見せてこそ女の魅力が高まっていきます」と、私に言ってきます。

 痴女どもが! です。

 

 私の席が教壇の一番前の席になってしまったのは、病弱設定に拍車をかけることを私が中等部に上がってからしてしまったのが原因です。

 あのときは、新作ゲームを購入し、徹夜でプレイして授業中に睡魔に襲われてしまいました。これは、自分対自分の戦闘です。睡魔と呼ばれる魔物と戦った、わけではありません。

 結果は敗北。

 物凄い勢いで机にディープキスをし、そのディープキスの反動で身体が後方に反り返り。後ろの席の机の角に私の後頭部がディープキスをされてしまい、気絶するという超絶プレイをしたことで。教室のクラスメイトとそのとき授業をしていた教師を、大パニックに巻き込んだという前科があるため。

 私は安全処置として常に教師の視界に入り、私の体調が万全なのかを確認するために、一番前の席に強制移動させられることになったのです。

 そのため授業中の居眠りができなくなりました。私がコク、コクと頭を揺らしていると、クラスメイトたちから、「天之高神あめのたかかみさん」の体調が! と教師に伝えられ。教師が慌てて私の体調を心配するという、勉学に来ているクラスメイトたちに大変迷惑をかけてしまうことから、居眠りができなくなってしまいました。

 まぁ、代わりに保健室にGO! しやすくなりました。ラッキーと言いたいのですが……。

 あまり保健室にGO! すると、ひめママに怒られます! 保健室にGO、することに怒られるわけではなく。

 そこにいる人物にあまり、私を会わせたくないらしいのです。


 私は、今日、保健室にGO! するか。どうしようかと考えていると。 

 チャイムの音が学園中に響きます。 

 はぁー、メランコリ―です。格好良く言ってみました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る