第八話
私は、行きつけのコンビニ向かって、少し涙を流しながら自転車を走らせる。
もう、深夜の三時半だ。
これは、深夜三時半に自転車で走っているときに、街から人の気配を感じない。この世界に自分だけしか存在しないのではと感じ、
来月に私宛にくる、請求書の金額を思い出して泣いているのだ。
さ、三百万円……。
さらに、その金額を回収するために。
ママと交渉して、今回の報酬額の三割を私の報酬にしてもらうように交渉しないといけないという。ミッション・インポッシブルが待ち構えていると思うと、涙が溢れでてきた。
私は、その涙を革のジャケットのポケットに入っているハンカチで、涙を拭うと。より涙が溢れてきた。
涙を拭ったハンカチも、ハンカチを取り出した革のジャケットも。
三百万円の金額の"一部に含まれている"のを思いださせるだけだった……。
二十四時間、明かりを灯している店舗が見えてくる。
今、現在、社会問題になっている。二十四時間営業と人為不足による過酷な労働という真実も確かにある。でも、深夜に明かりを灯してくれているとホッとする安心感を与えてくれていることも真実である。
私の座右の銘でもある。"中立"と"矛盾"、そのものだ。いや、違うかな……、私から言えば世界の
自転車を駐輪スペースに止め、チェーンを後輪に結ぶ。
入り口に立つと、自動で迎え入れてくる。あ! これは、心霊現象ではないですよ! 自動ドアという装置です。
え!? そんなこと知ってます、そうですよね。
「いらっしゃいませー!」
男性の元気で明るい挨拶の声が聞こえてくる。
「
「
今、話をしている相手は、『
このコンビニのオーナーさんです。
性別は男性、年齢は三十五歳です。あと、既婚者でもあります。奥さんは二十八歳です、ぽわっとした天然系の
そして、五歳の双子ちゃんのパパさんでもあります。奥さん似の女の子です、パパに似なくてよかったと思っています。
私は! というより関係者、全員そう思っていると思います。
単純に、見た目の"ヤバさ"を隠しきれていないことにあります。さきほどの黒服さんたちもヤバイ分類の人たちなのだが、隠そうとすれば、隠せる人たちなのですが。
でも……、悟さんは隠せない。
左の額上から左
それがどちらとも、深い傷のために傷を塞ぐために肉が盛り上がり、傷跡のインパクトが増し増しなのです。
あと、メッチャ! 目つきが悪い。
そしてより印象的を悪くしている最大の原因が瞳が大きいのだ。それが野獣のような鋭い目に見えてしまい、威圧感が半端なくアップさせていた。
あと、それだけではなく。
身長は、百七十センチあるか、ないかぐらいなのだが……。筋肉が凄い、プロの格闘家と見間違えるほどの肉体なのだ。
さすがは、"元"、"人食いの虎"という名で呼ばれていた人物だけのことはある。
人食いの虎と言う二つ名の由来は、背中に虎が刻み込まれており、
勘違いしないで下さいね。
悟さんは、異能者じゃないですよ。ただ、元、"ヤ"の付く仕事をしていた人です。
どうして? 元、"ヤ"の付く仕事をしていた人がコンビニのオーナーさんをしているのか? 疑問に思われる方もいると思います。
それは簡単です。
ママたちに喧嘩を売ってしまったからです。
悟さんが自らの意思でママたちに喧嘩を売ったわけではありません。
"ヤ"の付く仕事をしている人ならではの事情があったのです。
それはですね……。
先代から代を引き継いだ人が、よりにもよって。
有限会社・『
そのために、悟さんはママたちの会社に、単身で殴り込み行くことに。
まぁ、想像してもらえると思いますが……。瞬殺です! まぁ、瞬殺と言いながら殺されていないので、実際は返り討ちにされました。
それで終われば、いいのですが! この後が大変でした。
ママたちを襲ったことが。
ありとあらゆる、各、関係者たちに知れ渡り。蜂の巣をつついたような騒ぎに発展することになってしまったのだ。
異能者の中でもママたちは、『
Sクラスの異能者とは一人で、最新兵器で武装した軍の一個師団に匹敵する力がある。一騎当千レベルを遥かに凌駕する力があると言えばいいだろう。
そんな相手に喧嘩を売ったのだ。そらぁー、ありとあらゆる、各、関係者たちがパニック状態になるのは、当然の話しだ。
ママたちも一応……。大人なので、話し合いで解決した。
その結果が、悟さんはママたちが引き取ることに。そして、命令をした人はご想像にお任せします。それと多額の賠償金を支払うというという内容で、この事件は幕を閉じ。
そして……、現在に至る。
ママたちが悟さんを引き取ったのは、悟さんの
そうそう。
あのとき、私は小学生だった。記憶に残ってるのは家に帰ってくると、リビングのテーブルの上に手紙が"一枚だけ"置いてあり。
【ちょっと、出かけてきます。夕食は自分で調達するように!】
という内容が
え!? 夕食代……、自分で出すの! と思った記憶が。
そのあと、悟さんがママたちに喧嘩を売ったという話しを聞いて。小学生だった、私も、悟さん"命知らず"だなぁーと子供心に思った。
悟さんもその筋では、二つ名で呼ばれる
勇者だ。
悟さんは、自分の命を代償にして異能の力を知ってもらうつもりだったようだ。
新しく引き継いだ人に、異能の力があるということを伝えたらしいが。どうしても、それが信じてもらえなかったらしい。
新しく引き継いだ人は、信じられなくて当たり前なのだ。
私も、さっきの仕事のクライアントの男性に試されたから分かる。まぁ、あのクライアントの男性の場合は、異能の力のことはちゃんと認識していたのである意味では揉め事にならなかった。が、好奇心的な部分で異能者として遊ばれた感はある……。
パフォーマンス料として、一億円、依頼料に上乗せしてやったから許してやろう。
問題をややこしくした原因は、約定に書かれていた内容があまりにも抽象的すぎたからだ。
"有限会社・『
異能の力のことも、一言も記載されていないし。その手出し無用の理由が不明うえに。一部の人しか、異能の力が存在しているという事実も知らされていなかったからだ。
異能の力に関して知っていたのは、急死された先代と悟さんの二人だけだったのもある。
そんなこんなで、悟さんはコンビニのオーナーをすることになるのでした。
言っておくのが遅くなりましたが。私は異能者としては、『
ただし……。
この異能者のクラスについては、ちゃんとした基準で判定されていないため、ランクと実力が合っていたいということも、多々あります。信用度は低いです。
あくまでも目安程度と思ってもらった方がいいのかもしれません。
私は、コンビニ並ぶ商品を買物カゴに入れていく。
まずは、カップラーメンだ! これは、新商品を見つけ次第素早くカゴに入れる。そして次にお弁当コーナーに。ここは立地条件がいいので、早朝から深夜帯までバランスよくお客が入るため、安定して豊富にお弁当などが陳列されている。が、私の大好きなお弁当がない!
「
「お、おお、そ、それは! "大肉盛り弁当"じゃない」
「
私に、大肉盛り弁当を渡してきた人物は、『
今絶賛、バイト中である。
バックヤードからお弁当やおにぎりなどの商品が入った青色のケースを私の横に置いて商品の入れ替える作業の途中だからである。
性別は男性、身長は百六十五センチ前後でヒョロっとした体形で、赤色のフレームのメガネを掛けており。分かりやすく彼を例えるなら、オタクと言えば分かってもらえるだろう。
もう癖になっているから姉さんと呼ばせているが……、彼は私よりも七歳年上である。
私がゲームセンターで、"うりうりうり坊"の限定ぬいぐるみが取れずに、イライラしながらゲームセンターを出てると、ゲームセンターのビルと隣のビルの路地で喝上げされているところを助けてあげた。
このときは、
あのときは、"うりうりうり坊"の限定ぬいぐるみを取るために、五万円を使って取れなかったために、絡んでいた男たちを、病院送りにしてやりました。
今度は、
私もあの周辺って、そんなに治安が悪いの? とツッコミを入れたい。
実際、繁華街が近くにあるから、住宅地よりも。若干、治安の悪さで言えば高いと言えなくもないが、お巡りさんの巡回や、繁華街の人たちのボランティア治安活動などしているので。それほどに高くないと思っている。逆に深夜に関しては、オフィス街の方がヤバイと思う。
決論から言えば、智彦君が運が悪いとしか、言いようがなかった。
助けてくれた、悟さんに男としての魅力を感じたらしく、ここでバイトすることにしたらしく。
そこに、ここの行きつけである、私と智彦君と再開することになった。
そうそう、智彦君が私の姉さんと呼ぶのは。
智彦くん完全に毒されてきているからである。ここの従業員の半分以上は、元、"ヤ"が付く仕事をしていた人たちだからである。
ヤの付いた仕事から足を洗った人や某、箱の中から出てきた人を悟さんは雇っている。一般的普通の会社は、そういった人を雇ってくれないからだ。
仕事がないために、また犯罪を犯したり、居場所がないために、結局、裏社会に戻ってしまう。
そのことをとても理解している、悟さんは積極的に雇用し、社会復帰させている。
まぁー。
私としては、彼らことを可哀想だとも思わないし、自業自得としか思っていない。それは、"中立"としての判断をした場合だ。
"目には目を歯には歯を"という言葉ある。
意味は、"人が誰かを傷つけた場合、その罰は同程度のものでなければならない、もしくは相当の代価を受け取ることでこれに代えることもできる"という意味である。
彼らは自ら道を外れたのに、最後は助けれくれと言ってきている。それなら真面目に生き、ちゃんとしてきた人たちの苦労に、なんの意味があるのか分からない。と私は言いたい!
でも、"矛盾"として判断するなら。
"罪を憎んで人を憎まず"という言葉がある。
意味は、"犯した罪は憎むべきだが、その人が罪を犯すまでには事情もあったのだろうから、罪を犯した人そのものまで憎んではいけない”という教えだ。
そう考えれば、更生の道を作る必要があることになる。
だから私の座右の銘が、"中立"と"矛盾"なのだ。
ダメ、ダメ。また、話の内容がズレてきている。
話の内容を戻さなくては!
そのために従業員さんたちが、私のことを"
完全に毒されてる。
悟さんは、私が子供のときからの知り合いなため、
智彦君がここでアルバイトするときに、問題が発生していたことを智彦君と会ったあと、ママたちから聞いた。
それは……。智彦君の"学部"にあった……。
智彦君の学んでいる学部が、法学部なのだ……。
悟さんが面接で智彦君の履歴書を見て、即、断った。
智彦君のこれからの人生を考えれば、あまり関わらない方がいいと言ったのだが。
変なところが頑固なのか。
「そんなの関係ないです! 僕はここで働きたいです!」
って言ったらしく。
ママたちからその言葉を聞いたとき。その根性があるなら喝上げされてるときに、その根性使えよ! と一人ツッコミしてた。
困った、悟さんがママたちに相談したら。
ママたちの回答は、"採用"の一言だった。
ママたちは、悟さんに対して。
私たち顔広いから、弁護士になるための必要なバックアップもちゃんとしてあげられるし。弁護士になって、雇ってくれる会社がなかったら、私たちの会社の顧問弁護士にするから問題ないわよ。
とのこと。
こうして、智彦君は無事? に、このコンビニでアルバイトをすることに。
大肉盛り弁当を渡したあと、智彦君は何かを思い出したように、慌てた顔をし。
「そうだ!
そう言いながら慌ててバックヤードに戻り、例の物を持ってきた。
私は、冷たい例の物を買い物カゴに入れ。
「ありがとう!」
とお礼の言ったあと。
私は、智彦君にお礼の言葉だけでは彼の功績に足りないと思い。キスをしてあげようと唇を近づけていくと。
「
と、いいながら。顔面、蒼白になっていた。
そのドン引きぶりに、大ショックだ。確かにツルペタだが、美少女にキスされようとしているのに、顔面、蒼白な態度はどうかと思うぞ。
ラブコメライトノベルの王道の王道! 展開で、この対応をされると私でも心が凹んだ……。
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