第七話
私は、自動販売機の前に立っている。
千円紙幣を吸い込ませ、一つのボタンを押した。そして、もう一つのボタンを押す前に、硬貨が落ちる音がする。
この頃の自動販売機は、連続で購入できない仕様になっているためだ。
分かる、分かるよ! 確かに、確かに! 連続で購入すると、取り出し口で引っ掛かって、取り出せないという現象が起こるのは知っているが。もう少し、もう少しだけ時間の延長をしてもらいたい。
そう心の中で叫びながら、取り出し口からペットボトルを取り出すのだった。
ペットボトルの蓋を開けると、透明な液体をブーツにかけながら洗い流す。さすがに、血肉が付いたブーツで歩き回るのはちょっとねぇー。
立ち入り禁止の掲げてある場所から自動販売機の場所までに移動するだけでも、血の靴跡が薄っすらと残っているのだから。
これから行きつけのコンビニに向かう予定だし、そのお店に大迷惑をかけるわけにはいかない。
――死活問題的になる。
なかなか落ちないブーツの血肉に悪戦苦闘していると……。
パッシングされた!
「やっぱり、
「あ!
バンからパッシングした人物は、『
性別は男性、年齢は二十二歳、身長は百七十センチで体重が百キロである。顔は体重が影響しているために顔が丸くなっている、体重さえ落とせば、かなり男前になると思うのだけれども……。
真人くんが言うには、見た目ではなく! 心の目で僕を見れくれる人! を探すためだそうだ。そのところは、私が深く考える必要はない。
性格は見た目どおりに温厚で優しい、あと料理が上手い。
真人くんの勤めている会社、『
いい人が早く見つかるように祈っている。
そうそう、真人くんが勤めている会社、『
このような仕事をしている会社を私たちの業界用語で、"
『
「真人くん、衣服調達できる?」
私の問に対して、真人くんは月明かりと自動販売機の明かりに映し出されている。血肉塗れのブーツに、ドロドロになった衣服を見て、普通の人間なら驚いた表情をするのだが。
厄介な仕事だったんですね。と言った感じの笑顔をしてくれた。
「大丈夫すよ!
真人くんは、営業スマイルを私にすると、すぐに会社に電話してくれた。
電話の内容が私の耳に聞こえてくる。
私の趣味に合わせてた衣服を電話相手に伝えていた。
真人くん、早くいい人に出会えると、いいなぁーと想った。
そのとき、私の頭の中にあることを思い出した。
私は
「真人くん! 会話中にごめんなさい。あと追加で男性用スーツ一式もお願いできるかしら? サイズは大きめでお願い」
一瞬、驚いた表情をしたが、真人くんは何も言わずに事情を察してくれたのか。
また、爽やかな営業スマイルを私にし。
「了解す!」
と言って。追加の男性用のスーツ件を電話相手に伝えていた。
電話相手との連絡を終えると、スマホをズボンの後ろポケットにしまった。
「摩志常ちゃん、三十分以内にこっちに来るす!」
「ありがとう、助かる」
「いろいろと仕事の話、聞きたいんすけど、僕も仕事があるんで」
真人くんは、残念な表情と心配な表情が混ざった、なんと表現したらいいのか分からい表情をを見せていた。
「大丈夫。心配してくれて、ありがとう」
また、私に爽やかな営業スマイルを見せてくれていると。
バンの後方から扉が開く音がすると、数人の真っ黒い衣装を身に纏った人が出てきた。
彼らは、私に軽く会釈する。私も彼らに軽く会釈を返した。
彼らは無言のまま、いろいろなこれから処理をしていくために必要な道具類を持ちながら、工場内に姿を消していく。
「摩志常ちゃん、僕も」
と言葉にすると。
真人くんもバンの中に入り、ゴソゴソと音がし。真っ黒い衣装を身に纏った姿で、先に工場に入っていた人と同じように、処理に必要な道具類を携えてバンの中から出てきた。
「工場の中に男性が四人いると思うけど、その対応もよろしくね」
私の言葉に、力強く親指を立てながら。
「任せて下さいす! 僕らもプロすから」
と言って。
声のトーンからして、爽やかな営業スマイルをしているのだと思う。だって、真っ黒な衣装は顔も隠しているので表情が分からないので、声のトーンで想像するしか、できません、ので。
真人くん、早くいい人に出会えると、いいなぁーと想った。
空になったペットボトルをゴミ箱に"ペットボトル専用"と書かれている方に捨てる。
そう言えば、お釣りを取るのをスッカり忘れたままだったことに気がついた。
お釣りの取り出し、再度、硬貨を三枚。自動販売機に入れ、ボタンを押す。
液体が入った物体の落ちる音と釣り銭が落ちる音が、また深夜に響く。
取り出し口からそれを取り出す。シルバーにブルーのラインが入っている。翼を授けてくれる、某、エナジードリンクだ。
私は、それを開けると、左手を腰に持っていき、グイっと一気に飲み干す。
ゲッポっとゲップが出た。
はぁー、なんか……、ママに似てきた感じがしてきたな。
しかし、このエナジードリンクって効果あるのかな? と思いながら飲み終えた缶を眺めながら思った。デザインが好きだ! シンプルだけど、インパクトのあるデザインだ! 見た感じから効果ありますよと思わせる勢いのあるデザインだ。
第一印象は大事である。ただし、中身は別だが……。
また、そんなことを考えている間に。
「おまたせしました」
バンを降りてきた男性は、ネクタイ姿にスーツとビジネスマンスタイルで登場だ。
あ、真人くんは、ジーパンにTシャツというラフなスタイルだった。
イケメンではないが、爽やかな感じの人だった。年齢は三十代後半かな? 左手の薬指に指輪をしていた。既婚者らしい。
真人くん、早くいい人に出会えると、いいなぁーと。また、想った。
「すみません。急に」
と、挨拶をすると。
「いえいえ、こちらこそお待たせしてしまって申し訳ありません」
と、逆に謝罪された。
私は、"うりうりうり坊"のイラストが印刷された名刺ケースから名刺を一枚取り出し挨拶をした。
「初めまして。
ビジネスマンスタイルの男性は両手で私の名刺を受け取ると。
内ポケットから名刺ケースを取り出し、名刺を一枚取り出し。両手で私に名刺を差し出しながらこう言った。
「こちらこそ初めまして。
…………? …………!
「ぇ、え……!?
「
表情と言葉が合っていなかった……。
この人が奈義さん息子さんだということを初めて知った。この業界は基本的に"秘密主義"な体質なのだ。
私は顔合わせを兼ねて、世間話をすることにしました。
美智春さんは前職、服飾デザイナーの仕事をしていたそうだ。
前社長である奈義さんは、どうしても美智春さんに、この家業を引き継いでほしかったようだ。
私もできれば、続けれくれた方が助かる。新規参入してくる業者は、仕事が雑だったり、暗黙のルールを無視するなど、質が低いのだ。
だから私の会社、『
深く深く裏に関わる者たちに最も大切たことは、信頼関係だからだ。表でも信頼関係は、大切なことです。
こうした。コミュニケーションをしっかりとしていく、必要性は非常に高いと言えるだろう。
話をしている内容で、なかなかに愉快な話を聞いた。その中で一番は。
『
なんでも、"高熱"が続いているから"俺は死ぬ"かもしれんと、奈義さんが美智春さんに言ってきたらしく。珍しく弱気な父親の姿を見た、美智春さんは服飾デザイナーの仕事を辞めて、社長になることを決意したらしい。
うん、うん、話だけを聞いていると、親子の素晴らしい美談だが……。
現実は…………。
奈義さん、人生で初めてインフルエンザにかかったらしく、動揺していたのこと。
動揺する奈義さんを想像するのは、なかなかに楽しい! というか。あのオッサン、刺しても死なんだろうという感じの人だからだ。
だから私は、美智春さんに"社長、死んじゃったの? "という言葉が口から出たのだ。
病院で診察してもらって薬を飲んで、一週間安静にしていたら元気になったとさ。
奈義さんも元気になってすぐに家業を継ぐ必要がなくなったのだから、美智春さんも服飾デザイナーの仕事に戻ればよかったのに。
さすがは、奈義さんの息子さんだ。"一度"、縦に振った首は、"絶対"に横には振らないかった。
それで、今は奈義さんが会長になって、美智春さんが社長見習いをしているとのこと。
おっと! 長話をしてしまった。本来の目的を見失ってしまっていた。
「あのー……。若社長、服を見せてもらってもいいですか?」
「はい、こちらになります」
私を乗ってきたバンの後方に案内してくれた。
若社長がバンの後方の扉を観音開きすると……、高級ブティックか! と思わせるハイブランドの商品が、ずらーっと綺麗に並べられた光景が私の眼中に。
「あのー……」
この高級ブティックのハイブランドの商品について説明を求める前に。
「父から聞いています!
あのオッサン! やってくれるわぁー。さすがに、刺しても死なん人だけのことはある。
私は基本、服はママに任せるか! ネット通販で購入します! お店に買いには行きません。店員さんがすぐに寄ってくるので怖いです。お仕事なのは分かります、分かりますが……。
――怖いです!
と、いうことで。
若社長が前職、服飾デザイナーの仕事をされていたので、全て任せることにした。ワタシし。
「すみません、服、見立ててもらってもいいですか?」
「はい、喜んで!」
若社長は爽やかな笑顔をする。その表情は生き生きとしていた。
私はバンの中で直立不動状態になっていた。というよりもさせられていた。
若社長は、メジャー片手に持ち慣れた手つきで、丁寧に私の身体の寸法測定していく。
ちょっと前まで本職だったことはある。
私の身体のサイズを測定を終えると、若社長はバンの中に綺麗に並べられている服から、私に似合いそうな服を数点、提案してくれた。
私は、提案してもらった服を試着することにした。服飾デザイナーだけあって、服を着る人の趣味趣向をよく理解してくれている。
私の好きな感じのデザインの服を選んでくれていたからだ。
「試着させていただきますね」
「どうぞ」
若社長は、バンの外で待機中です。
触った感触が気持ちいい、ハイブランド、恐るべしだ! とてもいい生地を使用している。デザインはシンプルながらもワンポイントに、ブランドのロゴが施されている。
お高い
いい生地を使っているから? それもあるが、縫い目が均等に整っている。丁寧な仕事をしているのがよく分かる。
ちょっとした差だが、この縫い目などのちょっとした差が最終的に大きく品質に差がでてくる。
評論家気分を味わいながら、着替えて終えバンから降りると。
「お似合いです! 天之高神様!」
「ありがとうございます、若社長のセンスがいいからですよ」
「嬉しいなぁー、そう言ってもらえると。元ですが、服飾デザイナーとしては最高の褒め言葉ですよ。お値段は、それなりに勉強させていただきます」
おっしゃー! と心の中で両手を上げてガッツポーズをしている自分の姿がいる。
若社長は、電卓に数字を入力していく。入力が終わると、電卓に表示されている数字を私に見せながら。
「男性用スーツが四着で、百二十万円。そして、天之高神様の服とその他一式で、百八十万円ですね。計、三百万円になります!」
爽やかにとんでもない金額を言われた……。若社長……、勉強させていただきますって言葉の勉強は、なにを勉強したのだろう?
とんでもない金額を私に伝えたあと、爽やかにニコニコしながら私の返答を待っていた……。
若社長……、この仕事向いてるわぁー。
「…………。有限会社・『
「ありがとうございます!」
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