炎にまつわる鬼と贄のせっ記
宮原陽暉
プロローグ
青年は探求者だった。
彼は、四百年に一度行われるという『炎の儀式』を追い求めていた。
長年追い続け、ようやく目の前にいるフードに身を包んだ男が『炎の儀式』について知っていることをつきとめた。
彼の顔は確認できない。あらわになっているのは口元のみ。それも影になっていてよく見えなかった。
それでも彼が若いということはわかった。どこか浮世離れして老成した雰囲気を持っているが口元に皺ひとつなかった。
あからさまに怪しい人物ではあったが、青年はこだわらなかった。求めているもの答えがわかるのならばと。
青年はフードの男に問うた。
「炎の民と呼ばれる部族がおこなう伝説の密議について知りたいのです」
フードの男が口を開いた。
「それを知ってどうする?」
「私は探求者です。追い求めるものがそこにあれば、そこに行き実際に見てみたいのです」
「見にいく、か……」
フードの男は言った。
「この東大陸よりさらに東。極東を目指せ。そこに炎の聖地――不死山と呼ばれる霊山がある。そこには『原初の火』というものがあり、密議はそこでおこなわれる。ちょうど今は四百年に一度の周期にはいるところだ。運がよければ見れるだろう」
「それは、どんな密議なのでしょうか?」
青年が再び問うと、フードの男は嘲るように答えた。
「くだらない迷信を信じた民の……愚かしい儀だ」
男は話しはじめる。
――炎にまつわる贄と鬼の話を――
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