第121話 サボる

 アオイがミスリル製の錬金大釜を2個作ってくれた。これに聖属性を付与した。

 まずは聖水を作る事にした。材料はアルカディアの水、アルカディアの天然塩だ。さらに『聖女』セレスに祝福してもらった魔石を加えて錬成する。出来上がった聖水を鑑定してみた。



 超聖水  品質  上質以上



 久しぶりに錬成をしたがとんでもない物が出来たようだ。


 次にポーションを作る。材料はアルカディア国で採取してもらった野生の薬草、アルカディアの水、こちらも聖水と同じくセレスに祝福してもらった魔石を加えて錬成してみる。


 錬金大釜全体から強い光が発生した!!


「むむ? ハイクオリティー品になったか?」


 出来上がったポーションを鑑定してみた。



 エクストラポーション  品質  上質以上



 こちらもとんでもない物が出来上がったようだ。


 出来上がった聖水とポーションを小瓶に入れて城壁に上がり敵に試してみる。

 まずは超聖水からだ。


 城壁を登ろうとしているスケルトンに超聖水を浴びせた!


 サーーーー


 スケルトンは灰になってしまった!


 ちょっと量が多かったかな……

 

 次はエクストラポーションだ。


 城壁を登ろうとしているゾンビにエクストラポーションを浴びせた!


 ドロドロドロ……


 ゾンビは変な風に溶けてしまった!


 うーむ……気持ち悪い溶け方だな……


 まぁ倒せるのは分かったからいいか。


「ねぇナック、それを使えば魔法を使わなくてもいいんじゃない?」


 カナデが実験の様子を見て話しかけてきた。


「そうだな……ポーションだと城壁の周りがドロドロになってしまうから聖水を城壁の防御に、火球の代わりにポーションを使うかな」


「これで魔法使いが空くわね……」


 カナデは何かを考えている。


「何かやるのかい?」


「魔法使い全員で特大魔法を放つのはどうかしら?」


 特大魔法だって? そんなのがあるのか?


「聞いた事が無いな……使った事があるのかい?」


「もちろん無いわ。でもやり方は学んだわよ。ファリスも知っているでしょうね。かなり魔力を消費するから多用は出来ないけど威力は抜群だと思うわ」


 ファリスは何でも知ってそうだな。


「じゃあ、ファリスと相談してみてくれ」


「そうするわ。あなたも魔力が豊富なんだから参加してもらうかもしれないわよ」


「それは構わないよ」


 カナデは早速ファリスの所に相談しに行った。

 せっかく城壁に上がったので様子を見て、みんなに声をかけていく。


 東側はアンデットで埋め尽くされた戦場。


 西側は建物を建てたり、のんびりと荷馬車が動いている。


 東と西では正反対の光景だ。


 地下の作業場に戻り、実験結果をファリスに伝えた。


「あれ? カナデが来なかったかい?」


「来ましたよ。魔法陣が必要なのでヒナさんを連れてアルカディア村に一度戻ってもらう事にしました」


「ヒナも? 魔法陣は設計図みたいな物なのかい?」


「はい。とても正確な物でないと発動しません」


「2人を戻すという事はかなり期待出来るという事だな」


 隊長2人が同時に居なくなるのはキツいはずだ。


「大きな打開策になるかもしれません」


 期待して待つとするか。


「俺はしばらく錬金術に集中するよ。出来上がった物を運び出す段取りを頼む」


「了解しました。そろそろ壺が出来上がってくると聞いています」


 とりあえず空いている壺に聖水を詰めていく。それを台車の上に乗せる。結構な重労働だがいいトレーニングになる。


「ナック様、助手を連れてきました」


「ん? 早いな」


 ファリスが茶色いゴーレムを2体連れて歩いてくる。


「この壺を城壁の上に運ぶのよ。壊さないようにね」


 ゴーレムが首を縦に振っている。分かったようだ。


「1番下級のゴーレムなので魔力の消費は少ないです」


 俺は何も言ってないけど必死に説明してくる。


「分かったよ。とりあえず謹慎は解除するから城壁までゴーレムと一緒に行ってくれ。みんなが驚いてしまうからな」


「了解しました!」


 多分、自分の目で状況を確認したいんだな。嬉しそうにゴーレムを引き連れてファリスが歩いていく。


 そういえばアイツはどうしたんだ?


 全くジェロの姿を見ないぞ


 ファリスを追いかけてジェロの事を聞いてみる。


「ファリス、ジェロはどこに行った?」


「ジェロさんなら厨房で働いてますよ。料理が好きみたいですね」


 アイツにそんな趣味があるのか? 厨房を覗いてみると本当にジェロが働いている。


 だが……


 隣りにはクレアがいる


 一緒に楽しそうに料理をしている


 ふーん 同じ趣味なら気が合うかもしれないな


 まぁ大人しくしているなら問題無い。


 作業場に戻ると今度はちゃんと人の応援者が数名来てくれていた。次々に壺へ聖水と薬を詰めて階段まで台車で運んでいく。階段からはゴーレムが運んでくるそうだ。

 聖水の入った釜が空になったので錬成に取り掛かる。


「ナックさん、ありがとうございます。実はみんな魔力が底をつくのではないかと心配していたんです」


「ん? 君達は魔法使いだったか。気づかなかったよ」


 魔法使いはみんなローブを装備しているが応援者は普段着なので分からなかった。


「はい。体力は十分にあるのでしばらくこちらを手伝って魔力を回復させます」


 体力に比べると魔力の回復は遅いらしい。


「魔力がキツい時は俺が代わりに入るから遠慮なく言ってくれ。魔力切れは他の者には分かりにくいんだ」


「魔法使いは少ないのでどうしても遠慮してしまって」


「それは逆だよ? 少ないから上手く休んで欲しいんだ」


「今後は気をつけます」


 魔力切れになるまで戦って倒れるより、早めに休憩してもらっていい状態を長く続けてもらいたい。


「変な言い方だけど上手にサボるのも覚え方がいいな」


「ははは、そうですね。基本みんな真面目ですからね」


 こういうのはジェロが得意だな


 カナデも不在だし、ちょっと魔法部隊をジェロに任せてみるか。

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