第115話 大掃除
2日目の戦いは完勝だ。負傷者もいない。
だが、後始末が大変だった。長城の外にいる敵は全滅したがこちらもマキビシのせいで近づく事が出来ない。
魔物から魔石を回収しつつ焼却をする。前線では慎重にマキビシを回収していく。
敵の遠隔攻撃に備えて盾を持ったクレア隊が前線で守りにつき、他の者達でマキビシの回収と死骸の焼却を行った。
これだけ大量の死骸が腐れば大変な事になってしまう
恐ろしい疫病が発生しかねないのだ
敵は散発的に攻撃してくるが矢の無駄だと気づくと攻撃をすぐに止めた。
今日も突然、東に向かって強風が吹いてきた
3日目はこれだけで終わってしまった。敵の死骸が多すぎたのだ。
だが、全体としてはいい休養になった。負傷した者、体調を崩した者がかなり復帰してきたのだ。
4日目の作戦は全く知らない
このままアンデット軍が来るのを待ってもいい。怖かったのは城壁の外の敵とアンデット軍が合流して強大になってしまう事だった。
朝になっても全く出撃する様子はない。程なく今日は全休との連絡があった。もちろん、偵察と警戒は怠らないが交代でみんなしっかりと休息が取れた。
作戦会議も行われていない
作戦はもう定まっているそうだ
5日目の朝になり、ようやく作戦の説明があった。
ザッジがみんなに説明をするみたいだ。そういえばファリスの姿を見ていないな……
「今日は長城に攻撃を仕掛ける! 作戦は単純だ! まずは俺をルナの竜で城壁の上に運んでもらう」
おいおい……まさか1人で戦うつもりか?
「次にビッケ、クレア、ヒナ、ルナ、カナデ、ミルズ、アオイ、セレスの順番で運んでもらってくれ」
むむ? 俺の名前が無いな……
「今、ファリスが地下を掘って長城の目前まで進んでいる」
なんだって? ファリスがいないと思ったらそんな事をしていたのか! また休まずにやっていたな! 恐らくミミズ系の魔物を召喚してやらせているんだろうが……
いくら魔力が豊富でもかなりの距離があるぞ!
「穴は小さいから1列に並んで進んでもらう事になる」
それでは大量に長城内に侵入する事は出来ないな
「ジェロ隊が地下を通って城門を開けてくれ」
ジェロ隊はステラ達もいるし強力だから問題無いだろう。
「城門が開き、城壁の上に敵がいないのを確認したらナックが全軍を率いて突入してくれ」
俺が動く時には敵がいないじゃないか……
まぁ指示に従うしかないけどな
ファリスが書いてくれた手順書通りに動けばいいそうだ。まず全軍を率いて長城中央部の城門前に布陣した。そこで無理に攻める事はせずに太鼓や鐘を鳴らして相手を挑発する。
敵の注意をこちらに引きつける
俺はやけに豪華な椅子に座っている
しかも変な格好までさせられて……
頭には金色の王冠を載せ、赤いマントを装備している
鎧は装備せずに貴族みたいな服を着ている
周りには近衛兵として指導者候補達が警護についている
彼らも金色の豪華な鎧を装備していた
「こんな装備よく準備してあったな……」
「他国との外交時に使う為に準備していたそうですよ」
わざと目立つ様に指示されているが……
座っているだけで目立つだろう
長いハシゴと階段のついた攻城兵器が準備された。使用するつもりは無い。単なる陽動だ。
「敵兵、続々と中央に集結しています!!」
ここから見ても分かる。オーク、ゴブリンが弓を構えている。オーガ、トロールは大きな石を中央に運んでいるようだ。
今日もここに来て追い風が吹き始めた
「移動式矢倉を前に出してくれ」
ヒナ隊とルナ隊が矢倉を設置した。追い風だが高い城壁の上には矢が届かないだろうな。もう少し前に出るしかない。
こちらはただ準備をしているだけだ
着々と準備を進めると敵は完全に中央に集結してきた
南の方角を見ると竜が低空飛行で迫ってきていた
なぜか沢山いるぞ!
数えると9匹いた。1度で全員運んできたのか!
魔物達は慌てて南へ向かっているがもう遅い。ザッジ達は既に城壁の上に降ろされ、竜は飛び去っていった。
「無事に運んでくれたようだな」
「竜が戦ってくれれば楽なんですけどね」
「あんなデカイ竜が暴れたら城壁が痛んでしまうからな」
もう囮役の意味は無い。服を脱いで鎧を装備した。城壁の上では激戦が繰り広げられているだろう。
固く閉ざされていた城門がゆっくりと開いていく
ジェロ隊がやってくれたな!
「ナック!! 緊急事態だ! すぐに突撃しろ!!」
ジェロの大声が聞こえた。まだ城壁の上の敵は片付いていない。さっき戦い始めたばかりだ。
だが……ジェロが言うなら間違いない!
「行くぞ!! 全軍突撃だ!!!」
騎馬隊を先頭に一気に突撃を開始した!
俺も馬に乗って長城に駆け寄る。矢が飛んでくるはずだがアルカディア軍の矢倉が前に出て、敵の射手を次々に倒している。
城壁の上をよく見ながら近寄っていく。大きな石を魔物が落とそうしているのが見えた。
「マジックボール!」
落ちてくる石を魔法で破壊する!
城門の前に落ちるのだけを狙えばいい!
「マジックウォール!」
矢が多く飛んできたら魔法障壁で防ぐ!
騎馬隊が次々に城の中に入っていく。俺は外で敵の落石攻撃を防ぐ。弓隊が前進して城壁の上を攻撃している。歩兵隊が弓隊をしっかりと盾で守っている。
「ナック! 東の門は開いている! アンデッド軍は目の前だ!」
「何!!!」
一気に押し切って長城を取るしかない!!
「フグミンが敵を抑えているぜ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読者の皆様へお願い
みなさんに支えられて執筆活動を続けています。
☆評価、♡応援してもらえると嬉しいです。
ふぐ実
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます