第112話 破軍

 奇襲攻撃は大成功だ。ビッケ隊も敵を殲滅したとの報告があった。


 このままの勢いで敵本陣に向けて突撃をする


 騎士団長ザッジを先頭に山型の突撃陣形が整っている


 ファリスが先頭の部隊に強化魔法を次々にかけていく


「軍師自ら敵の小隊を全滅させたのだ! 騎士団も負けていられないぞ! 皆の者! 突撃だ!!!」


 ザッジの大号令で騎馬隊が怒涛の勢いで突撃していく


 その後を歩兵隊が追いかける


 敵は単純な横陣で防御柵の様な障害物を設置しているが、先頭のザッジがズタズタに破壊して突き進んでいる。


 敵は何とか応戦しようとするが、ザッジの凄まじい突進力にほとんど抵抗出来ずに倒されていく。

 完全に崩れた敵陣に歩兵隊が突入していく。混乱している敵を楽々と倒していた。ビッケ隊も一緒に戦っているみたいだ。不意打ちを得意とするビッケ隊は混戦に強い。


 だが、このままだと敵味方が入り乱れて乱戦になる


 少しずつ敵が落ち着きを取り戻し、数を頼りに押し戻そうとし始めた。


 カン! カン! カン! カン! カン!


 鐘の音が鳴り渡ると一斉に突撃部隊が退却を開始した。


 敵が勢いに乗ってこちら側に突撃してくる。


 アルカディア軍は横陣を引いて待ち構えている。


 ヒナを中心とした弓部隊だ。


 次々に突撃部隊がアルカディア陣に帰還していく。


 そして十分に敵を引きつけてからヒナから号令が発せられた!


「弓隊! 放てぇ!!」


 矢が次々に放たれて敵を射抜いていく


 東への追い風に乗り、かなり飛距離が伸びている


「次! 放てぇ!!」


 弓隊は横一線に3列で並んでいる。矢を放ったらすぐに後ろに下がり、すでに矢を構えた次の列が前に出て矢を放つ。途切れる事無く矢が放たれて、突撃してきた敵は全滅した。


 敵は突撃をやめて陣形を組み直そうとしている


「いくぞ!! 突撃!!!」


 再び、ザッジを先頭に騎馬隊が突撃を開始し、歩兵隊がそれに続いていく。


 その中にカナデの姿があった。青い鎧を装備した防御を得意とするフロンティア騎士団に守られながら敵陣深くへ入っていく。


 カン! カン! カン! カン! カン!


 また鐘の音が鳴り渡り、突撃部隊が退却してくる


 カナデ達も無事に戻ってきた。敵も今度は罠だと分かっているので追ってはこないが……


 敵の一団がこちらに突撃してくる


 カナデが魅力した敵だ


 アルカディア軍はわざと騒いで全軍退却を開始した


 すると敵陣から次々に敵が飛び出してきた。今度は迎撃しながら本当に退却する。


 最後尾を務めるのはクレア隊だ。退却時間を稼ぐ為にゆっくりと下がりつつ迎撃する。自分もクレア隊の一員なので一緒に戦う。盾をしっかりと構えて守りに徹し、隙がある時だけ反撃して敵を倒す。そして少しずつ下がっていく。


 ここがクレア隊の勝負所だ


「みんな! しっかり落ち着いて守るのよ!!」


 クレアから檄が飛ぶ。勢いに乗って突撃してくる敵を迎え撃つのは大変だ。時々、吹っ飛ばされる者がいるがすぐに盾を構えた他の者が隙間に入り、敵を絶対に後ろには通さない。


 怪我を負った者は後ろに下がり、ファリスから治癒魔法をかけてもらい、すぐに隙間を塞ぐ準備を整える。


 クレアが巨大なオークと一騎打ちを始めた


「ナックさん! 右前方からも大きなトロールが来ます!」


「よし! そっちは俺が行く!!」


 さすがに倒せないだろうが防御に徹すれば止める事は出来るはずだ。


 トロールと一騎打ちだ!


「ナック様! 強化魔法をかけます!」


 ファリスが馬に乗って現れて次々に強化魔法をかけてくれた。


「助かる!! クレアにも頼む!」


「了解しました!」


 ファリスがクレアの方へ駆けていく。


 トロールが巨大な棍棒を振り回して攻撃してくるが、動きが遅いので楽に避けれる。カウンターを次々に加えていく。


 よく見るとクレアの他にもミルズとアオイまで大きなトロールと一騎打ちしている。


 ドン!!!


 巨大なオークが地面に倒れた!


 クレアがオークを倒した!


 ドン!!!


 大きなトロールをミルズが倒した!


 ドン!!!


 大きなトロールをアオイが倒した!


「マジかよ!!!」


 俺も必死に戦う!


 ドン!!!


 やっと俺も大きなトロールを倒した……


 クレア達はすでに次の大物と戦っている


 カン! カン! カン! カン! カン!


 砦から退却の鐘が聞こえてくる


 クレア隊が一斉に退却を開始した


 クレア達も戦いをやめて退却していく


 砦前の橋を渡り終え、全軍の退却が終わると橋が素早く上げられていく。


 かなりの数の敵が砦の目の前まで迫っていた


 砦にはルナ隊が待ち構えている


「弓隊、敵をよく狙うのよ! 放て!!」


 矢倉の上からしっかりと狙いを定めて矢が放たれていく


 矢倉にいるのは弓の名手ばかりだ。ほとんど矢が外れる事が無い。


 砦には次々と敵が押し寄せるがほとんど近づく事が出来ずに矢の餌食になっていく。


 だが、敵の数が多い。ルナ隊からヒナ隊に弓隊が交代する。こちらの隊も弓の名手揃いだ。


 敵は屍を乗り越えて砦に迫ってくるが、やはり砦に近づく事は出来ない。


 敵は諦めて退却しようとしている


 ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!


 砦周辺に太鼓の音が響き渡る


 すると突然、砦の外にジェロの騎馬隊が現れた。退却する敵軍に突撃していく。


 敵は不意を突かれ次々と倒されていく


「ウヒャーーー 超最高だぜ!!」


 ジェロが先頭になって剣を持ち敵をなぎ倒している……


 その横にはステラとミンシアがいる。


 アイツ……俺の指示を無視しやがって


 戦うのは禁止と言っておいたのに!


 傷口が開いても治療は無しだな


 カン! カン! カン! カン! カン!


 鐘の音を聞いたジェロ隊が大暴れを終えて戻ってきた。


 敵は自分達の陣営に引き上げていった。もう攻撃は仕掛けて来ないだろう。


 敵陣とアルカディア軍の砦の間には敵の屍だけが無数に積み上がっていた。

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