第86話 集団

 フロンティア騎士団の青い鎧を着て一緒に訓練をする。剣と盾も支給されている物を装備した。


 ちゃんと早起きしてフロンティア村の館前で装備を整えて待っておかないとな。無理を言って参加させてもらうんだから集合時間に遅れる訳にはいかない。


 家でしっかり装備を整えて、アルカディア村の馬を借りてフロンティア村に向かった。

 フロンティア村の館に着くと早く来すぎたみたいで、セレスが館を開ける前に着いてしまったみたいだ。


「あら? 訓練の集合時間はまだよ?」


「さすがに遅れる訳にはいかないだろ? 早めに来たんだよ」


「丁度いいわ。お茶でも飲みましょう」


 セレスが館の扉を開けて案内してくれた。アルカディア村の館を手本にしているから作りは似ているけど、多少違う部分もあるみたいだ。


「毎日、君が館を開けるのかい?」


「そうでもないわ。数名、鍵を持ってるから交代ね」


「今日はここに泊めてもらって、明日は診察をして帰る予定だよ」


「聞いているわ。村を案内する様に頼まれているわよ」


 温かいハーブ茶を出してくれた。アルカディア村の物とは少し香りが違うみたいで面白い。


「ねえ? 私にはこれ以上訓練をする意味が分からないわ」


 みんなそうだろうな……十分に国を守る力はあるんだ。


「説明が難しいんだ……平和になるまでとしか言えない」


「1番疑問なのはあなたが戦いを望んでいないのに、こうして戦う準備をしている事よ?」


「そうだな……だからみんなと一緒に戦う事にした。これではおかしいな……でも本当だ」


「……苦しそうね。分かった。私も訓練に参加するわ」


 みんなで乗り切るしかない。


 セレスも青い鎧を着て館の前に整列をした。みんな馬に乗ってアルカディア村まで移動する。移動も訓練の内だ。

 ダンジョンに入ってレベル上げをするそうだ。

 ファリスから今日の訓練について説明がある。


「今日はオークのナイト1体、戦士3体と対戦します。レベルは6です」


 今後を見据えて新たに作った小部屋で訓練をするんだな。オークのレベル6は結構強いだろうけど、他の騎士団はもっと高いレベル設定らしい。


 フロンティア騎士団のリーダーから戦術の説明を受ける。


「今日はセレスさんが参加してくれたので、セレスさんを中央に半円形の陣形で戦ってみよう」


「私はディスペルマジックを使ってから回復役をするわ」


 みんなと一緒にオークと戦う。自分は魔法は使わず前衛として戦っていく。ちゃんと盾役の人も決めてあってしっかりと攻撃を防いで、ダメージを受けたらすぐにセレスから回復魔法が飛んでくる。

 敵を上手に囲んで攻撃を重ねていく。派手さは無いが堅実な戦いぶりだ。


「やるじゃないか。だいぶ訓練を重ねたな」


「他の村より弱いのはみんな分かっているのよ。だから工夫して何とかしようといつも相談しているわ」


 昼までオーク相手に訓練を続けて、昼食を挟んでまた訓練をする。


 ファリスからまた説明がある。事前に文書で通達してあるそうだが、初回なのでしっかり説明するそうだ。


「次はレベル12のレッドキャップの3体と戦います。危険だと思ったらすぐに退却して下さい」


 これが本番だな。今までとはレベルが違う。これが倒せればレベルが一気に上がる。

 フロンティア騎士団は聞いていたほど弱くない。元々、戦った事が無い人ばかりなんだ。小さな頃から狩りしている田舎村の人達とは違う。

 

 フロンティア騎士団のリーダーから戦術の説明がある。


「今度は3組に分かれて囲んで倒そう。オークと違って素早いから注意する様に。盾をしっかり構えて距離感に気をつけよう。敵の行動パターンは今までのレッドキャップと変わらないそうだ」


 指示もしっかりしている。とても堅実な戦い方だな。フロンティア騎士団には槍を装備している人がいない。盾を前に出して囲み、距離をとって倒すんだな。

 変わった戦い方をするそうなので、最初は見学する事になった。


 3匹のレッドキャップに対してフロンティア騎士団も3組に分かれ、すぐに敵を取り囲んだ。


 全員、盾をしっかり前に構えている。


 レッドキャップが飛びかかって来た!


 飛びかかられた人を中心に左右の人達が盾を突き出して攻撃を受け止めた。

 すぐに他の人達が剣を突き出してレッドキャップに攻撃を加えた。


 レッドキャップはたまらず後ろに下がった


 下がったレッドキャップをまたみんなでしっかり囲んだ


 レッドキャップから見ると盾の壁がある様なものだろう


 レッドキャップはキョロキョロして隙を探している


 ジリジリと囲みが小さくなってきて


 レッドキャップの死角から突きが加えられ始めた


 レッドキャップは怒って後ろに飛びかかった!


 また3人の盾で防ぎ、周りが攻撃を加えている


 レッドキャップは後ろに下がった


 すぐに囲まれてしまう


 また盾の壁が出来ている


「これはキツイな……全く相手にならないぞ」


 3組とも同じ戦い方をしてレッドキャップを仕留めた!


 時間は掛かるが恐ろしいほどに堅実だ。決まり事が徹底されている。完全な集団戦術だ。個々の弱さをみんなで補っている。


 どれだけ訓練してきたんだろうか……


 パーティーに混ぜてもらい戦った。慣れない内は間違った動きをしてしまったけど、しばらく戦ったら何とかついていける様になった。


 これが弱いだって? かなり上のレベルまで倒せそうだ

 

「負けない戦い方を弱いと言うのは違う。素晴らしい戦い方だ。よく訓練している。強いな……」


「フロンティア騎士団はクレアさんから指導を受けています。この戦い方もクレアさんが考えてくれました」


 クレアらしい戦い方だ


 戦いが苦手な人でも十分に活躍出来る


 フロンティア騎士団はもっと強くなるな

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