第67話 新たな戦い

「ヤツらは部隊を組んでいた。さっきのナイトタイプのヤツがリーダーだったぜ。最初は陣形まで組んでいやがった」


 ジェロはふらつきながら立ち上がって北を見ている。


「他にもまだ来るのか?」


 ザッジはオークの魔石を回収しながらジェロに尋ねた。


「突然だったからな……最後尾を守るだけで必死だった」


 他にもあんな敵が沢山いたらとても防衛出来ないな……


「橋を壊した方が良くないか?」


 ザッジとジェロの意見を聞いてみる。勝手に壊す訳にはいかない。


「……難しいところだな。俺は壊さない方がいいと思う」


 ザッジは壊さない方がいいらしい。


「俺みたいに勘では無いんだろ? 理由を教えてくれ」


 ジェロがザッジに聞いた。この2人のやり取りはあまり聞いた事が無いな。ザッジは真面目で無骨なタイプで、ジェロは野生の勘頼みのタイプだ。気が合うのか分からないがお互いを認めてはいる様だ。


「橋が架かっていれば敵はここに集中する。ここさえ通さなければいいとも言える。それに……防衛線は北の領地内に作った方がいいかもしれない。北の領地はもう戦場だ。橋の向こうにも砦を築きたい」


 ジェロはザッジの意見を聞きながら頷いている。納得しているみたいだ。


「いい案だな。橋の向こうに出城みたいなのを築けば、川に橋も架けれないし、船も出せないぜ。問題は北がどうなっているかだ」


 他国の領地に出城を築くのは無理だな……そんな事をしたら侵略行為で戦争になってしまう。防衛するのに効果的なのは分かるけどな……


「橋は壊さずに封鎖にしよう。手前に強固な関所を築く事にして、北の情勢次第では対岸に出城を築くのも考慮しておこう」


 後続の部隊が徐々に集まってきた。ザッジが指示を出して橋に防御柵を設置する。

 ジェロは遠くを見つめている。何かを考えているのだろうか。


「ナック……何でこんな事になったと思う?」


「そうだな……つい先日、強敵を探しに東の国の入口まで行った。結局、東の国には行けなかったが東の国の兵がこちら側に沢山いた。東の国は魔物の勢力が強いらしい。長城を突破されたかもな」


「……それなら東の国が魔物を使っている可能性まであるぜ。北はもう駄目だな。ウチは耐えたが西が心配だ」


 西か……未だにゴブリンの駆除に奔走している状況なのにオークまできたら西は……


「ジェロ、西に援軍に行くか? ウエストゲート村の守りも固めないといけないし条件付きで認めるぞ?」


「嫌な予感しかしないが聞いておくぜ?」


「参謀として騎士団に参加するなら認める」


「俺を表舞台に立たせるつもりか? 参謀なら目立たないか……」


 ザッジの所に兵士が報告に来ている。


「森に誘い込んだ敵を全滅させました。負傷者無しです!」


 よし! さすがだな。森の中ではアルカディア軍は間違いなく強い!


 ここは大丈夫そうなのでジェロとダンジョン砦に戻ると、ジェロはすぐに空いているベッドに倒れ込んだ。


「ナック、肝は分からないって事だ。敵を知れば活路も見出せるが知らなければ厳しい……敵はアルカディアを知らないぜ……」


 隣り村の人達が馬車で南へと運ばれて行く。ジェロは大イビキで豪快に寝ている。

 アルカディア国が着実に力を増している事はほとんど知られてない。それを活かせば道が開けるか……

 大きな出城や砦を築けばアルカディア国を知られてしまう。今のままならどうだ? 森はアルカディア軍が1番得意な地形だ。


 何も無い様で有り、有る様で無い

 

 森の入口付近に罠を仕掛けるか……敵が来た事さえ分かればいい。後は森の中で確実に敵を仕留める。敵には何が起きているか全く分からないな。

 

 橋で警戒に当たっているザッジの所へ行き自分の案を伝える。


「しばらくここに住んで薬草畑を作ってみるかな。橋の両側の更地を利用して畑を作る」


 ザッジは全く意味が分からない様だ。


「もちろん罠だ。出城も砦も目立ち過ぎるが畑なら呑気な農民を装える。オークが襲ってきたら森に逃げ込んでからみんなで迎撃する。見られない様にな」


「お前は時々おかしな考えをするな……よく分からないがやって見ればいい」


「ああ、詳しくはファリス達と相談して決めよう。それより隣り村を見に行かないか?」


「俺も気になっていた。見に行くだけだぞ」


 馬に乗って隣り村の近くまで行って様子を伺う。村はオークに完全に占拠されていた。ゴブリンの姿も見える。ゴブリンはオークの手下の様だ。人がいる感じはしない。魔物だけで村を占拠したか……オーク達の中に一際大きな体の個体が数体見える。何やら指示を出しているみたいだ。


「大きいのが部隊のリーダーだな。ナイトタイプなのかもしれない」


 攻めるのは大変だぞ。数も分からないくらい多い。ここを拠点に周りを荒らすつもりか……


「やれない数ではない。だがかなりの被害がでるな」


 ザッジもさすがに攻撃を躊躇う数だな。正面から攻めたらアルカディア軍が無傷で済むとは考えられない。ここは既に砦と化してきている。


「人が操っていないのであれば戦いやすいかもしれないな。それなりの知能はあるようだが人並みでは無いだろう」


 少しずつ数を減らしていくか……


 久しぶりにアレをやってみるかな 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る