第62話 模索
北の国境の橋に関所が築かれた。かなり厳重な検問を受けるらしく、こちらに来る事はほとんど出来ないみたいだ。
商人ルドネもこれからは西の橋を通ってアルカディアに来る事にしたそうだ。
今日は商人ルドネが採掘の専門家を連れてきてくれた。移民するかはしばらく暮らしてみて考えるそうだ。掘っても良い石が出なければ採掘師として働けないから仕方がない。セントラル村に客人として滞在してもらう事になった。
「ナック様、西からの道はとても快適ですね。途中の村にも宿を建築中だそうで、これからは安心して旅が出来そうです」
「国内はかなり安定してきました。アオイに牛の調達を依頼しておくのでよろしくお願いします」
開墾するのに力が強い牛の需要が高い。牛の取り合いになりそうなので入手しておいた方が良さそうだ。なにより自分が畑を耕すのに使いたいのもある。気分次第で牛か馬を選びたいからな。
「アルカディア村の周辺は開発が進んでしまったので、セントラル村まで行かないと畑を耕せてもらえないんですよ」
「まだ続けておられたのですか! 余程お好きなのですね」
とにかく何も考えなくていいのが最高だ。
「北の領地は雲行きが怪しいですね」
「はい。もう戦いは避けれないかもしれません。王都からの包囲も厚くなっています。アルカディア国も何かしらの対策が必要と思われます」
もう戦いたくないんだが……西のゴブリン繁殖を手助けしていたのはバレバレだから、王都からは厳しい監視に合うだろうな。次第に態度が強固になって最後は戦争か……
「北の領地は東の国に支援を要請するかもしれません。ただ、東の国は最悪の内戦状態らしいとの噂がありますので支援は得られないと思いますが……」
そんな事になったら最悪だぞ……
でも極小国のアルカディアに出来る事なんて無い。せめて隣村との関係だけでも良好に保とう。後は防衛力の強化しかないな。
「ルドネさん。どこか強い魔物と戦える場所はありませんか?」
「強い魔物ですか……辺境地の山奥か、東の国くらいでしょうか。他国の者をダンジョンに入れる領主はいないでしょうし……」
そうだよな……やはり難しいか……
ん? 辺境地の山奥だって?
アルカディア村の東は山だが魔物なんていないぞ?
熊どころか、羊も、スライムもいない……
探せばいるのかな?
休日を利用して東の山へ魔物探索に行く事にした。どうしてもダンジョンに強い魔物を配置する必要がある。用心の為、ビッケも連れて行く事にした。
「ルナ、ビッケと山を上の方まで登ってみようと思うけど行くかい?」
「魔物よりも山登りの方が危険だわ。何だか気乗りがしないのよね。やめとくね」
確かに山登りは危ないな。山登り用の装備をしっかり整えておいた方がいいな。ヒモやピッケルくらいは持っていくか。
ビッケは山登りは初めてらしいけど、恐ろしい程身軽なので楽々登って行ってしまう。こっちは転ばない様にのんびりと登る。
「魔物がいる感じがしないんだよねー」
「やっぱり何も無い田舎には魔物もいないな」
登っていくと次第に斜面がキツくなってきた。とても歩いて登るのは難しいくらいだ。
「ビッケ〜 もう登るのは無理だから横に進もう」
ビッケはまだ登れそうだけど自分には無理だ。登るのは諦めて北へ進んで行く。日没近くまで歩いたが魔物は居なかった。暗くなる前に安全な所でテントを設営してキャンプをする。
「ナック兄、北の状況はそんなに悪いの?」
こんな大変な思いをしてまで強い魔物を探すくらいだからな。誤魔化しても仕方ない。
「ああ、戦争が起きそうだよ。アルカディア国は土地が豊かだから狙われる危険性もあるな」
「東の国に行ってみようよ。強い魔物が沢山いるってアオイが言ってたよー」
東の国か……北の領地を通って行っても国境が通れるか分からない。ルドネさんに頼んで商人のふりをして一緒に行くか……いや……内戦状態の国にルドネさんを連れて行く訳にはいかないな。
船で行くか……今の2人しか乗れない釣り舟では無理だけど、大きな船を作って海路を行けば誰にも邪魔されずに東の国に行けるな。
「大きな船を作って海を通るしかない。時間が必要だな……」
「大きな船があれば海の向こうの国も行けるね。行ってみたいなー」
「ビッケは海の向こうに行きたいのかい?」
「もちろんさー。いつも海を見てると向こうはどうなってるのかなって。いろんな国を見てみたいなー」
「そうか……よし! やってみよう。海を渡れるかは分からないけど大きな船を作って海で活動する訓練をしよう」
「いいね! 僕にやらせてよ! ワクワクするな〜絶対に楽しいよ」
夜空の星をビッケと見上げながら、遠い海の向こうに思いを馳せる。知らない国、知らない人、知らない言葉、知らない食べ物。
夢みたいな話だが無理ではないな
ビッケが目を輝かせている
本当はまだ少年なんだ いいじゃないか
将来の希望の為に 挑戦しよう!
朝になって山を降りる事にした。北の森に入って行くとやっと羊を見つけた。森の中を探索しながらアルカディア村に戻ったが、強い魔物を発見する事は出来なかった。
館でファリスに結果を報告して、船の建造案を提案してみた。
「ビッケを中心にして海への進出に挑戦して欲しい。急いではいないから、じっくり時間をかけてやってくれればいいよ」
「重要な案件ですね! 私もやります。で、魔物の方はどうしますか?」
「北を通って東の国に行けないか試してみるかな……」
「ビッケか騎士団長を連れていって下さい。1人は絶対に駄目です」
「じゃあビッケだな。ついでに隣り村に食料を持って行って布を調達して来るよ」
「分かりました。こちらで情報収集をして計画を立案します」
「ザッジ騎士団長には北側の防衛策を練ってもらおう。また仕事が増えて大変だけどそちらも頼むよ」
「はい。最近はあまり仕事が無いので丁度いいです」
北の領地と東の国への潜入調査をしながら魔物探しだ
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