第61話 仲良し
北の領地から村長が極秘でやってきた。館でファリスと一緒に会談を開いた。
「大変申し上げにくいのですが、持ってきた布と食料を内密に交換して頂きたいのです。アルカディア国では既に布の生産が出来るのは承知していますが、どうかお助け下さい……」
「そんなに厳しいのですか?」
「はい。もうすぐ関所の建築が始まります。ただでさえ食料不足なのに建築しに来る職人の食事を提供する様に命令が出ました……」
「ファリス、ここの村は隣村としてずっと仲良くしてもらっていた。頼ってきてくれたのだから援助してあげたい。どうだろうか?」
「いいと思います。これからも変わらず協力していきましょう」
翌朝、小さな荷馬車が食料満載で3台準備されて、クレア達が隣村まで運んでくれる事になった。
「ナック様……こちらが持って来た布はわずかです。荷馬車1台分にもなりません。これでは交換になりません……」
「いいんですよ。困った時はお互い様です」
クレアを見て大きく頷いた
「では村長さん。出発します。しっかり護衛しますのでご安心を」
クレア達が隣村に向けて出発した。
「ありがとうございます。このご恩はいずれ必ず……」
隊列が北門から出て行くのをファリスと見送った。
「荷馬車3台分とは奮発したね。良かったのかい?」
隣りにいるファリスに問いかけた。
「得る事が難しい事を得ました。こちらは大豊作ですしね」
さすがだな。出す時にはしっかり出す。中途半端が1番ダメだ。
「布はまだ多く出来ないので北と交換を継続しましょう。支援にもなりますので」
「そうしよう。定期的に食料と交換してもらおう」
布もまだ足りてはいない。移民が多かったのでかなり必要だ。
今、最も不足しているのは鉱石だ。ダンジョンを使わないと手に入れる事が出来ない。館に戻ってファリスと今後の相談をする事にした。
ダンジョンや魔術具に頼らないという政策を実現する為に新たな挑戦を始める事にした。
各村で新たな特産品作りに取り組んでもらう。
ノースフォレスト村は木炭作り、ウエストゲート村はレンガ作り、セントラル村は洞窟からの採掘、フロンティア村は麦酒作り、アルカディア村は果樹園とした。
「各村、家はほぼ完成しましたので館の建築に取り掛かって貰います。ベースはここの館ですが、風呂は男女用で2室、トイレを増設、食堂は酒場兼用、2階は宿屋とします。館の規模はここより大きくなりますね」
魔術具を館に集中させて魔石の消費を抑える狙いだ。とりあえず各村1棟建築してもらい、足りなければ1階部分のみの館を建築してもらう予定とした。
ダンジョンの見直しも実施した。
小部屋は熊、レッドキャップ、ミミズ各1。中部屋は擬似洞窟のままでミミズを追加。大部屋は擬似攻城戦とした。
国防の見直しも実施した。
村毎に騎士団を結成する。それに合わせて騎士団毎に装備の色を統一してもらう事にした。
アルカディア村は赤、フロンティア村は青、ノースフォレスト村は緑、セントラル村は黄、ウエストゲート村は紫と決めた。
騎士団長のザッジは特別色で黒。これを機にクレアに副団長へ就任してもらった。クレアにはジェロ渾身の作で美しい装飾が施された白桃色の装備を着用してもらう事になった。
ビッケには特殊部隊の隊長に就任してもらう。特別な才能がありそう者はビッケの隊に入って集中的に訓練する。今のところ隊員はフグスライムしかいない。
ただ、候補者が1人だけいる。『聖女』のセレスだ。間違いなく貴重な回復職なのだが、表向きは狩人のレベル5だ。アルカディア国の若者には最低でもレベル5になってもらう事にしているので、そこまでは渋々戦ってくれたけど、レベル5になった途端にダンジョンへ来なくなってしまった。フロンティア村の村長として頑張っているし、本人が戦闘に全く興味がないので打診するだけに留めておいた。
「戦力的には魔法系のジョブを増やしたいですね。カナデさんみたいな魔法使いとヒーラーが欲しいですね。今まではナイトが必ずいましたが今はクレアさん1人ですしね」
ステラ達が収穫祭に来た時に騎士宿舎の部屋に置いたままだった荷物を持って行ったので、そこを他の村からダンジョンへ訓練に来る人向けの宿泊所とした。
クレアはフロンティア村の前にある牧場横に家を建てて母親と一緒に牧場管理をしてくれる事になった。
「これでようやく国全体が落ち着くな。西からの移民で思わぬ苦労したけど、何とかなりそうだ。ファリスも少し休んでくれよ」
「はい。ちょっとのんびりします。それから私もレベル5まで上げないといけませんね」
「ダンジョンに行く余裕など無いくらい働いていたのだから、レベルが上がってないのは仕方がないよ。ゆっくりやればいいさ」
ファリスに2週間の休暇を取ってもらう事にした。その間の館の管理は自分とルナでやる事にした。
「では行ってきます」
ファリスはただ休むのは申し訳ないからと、ノースフォレスト村のキャンプ場へ視察に行くそうだ。
「私1人では危ないので『護衛として』ビッケに一緒に行ってもらう事にしました。それではよろしくお願いします」
仲良く荷馬車に乗って出発するのをルナと見送った。
変な理由はいらないと思うけどな
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