第6話 ごく潰しの寄生虫の幼馴染
第6話 ごく潰しの寄生虫の幼馴染
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ー村ー
どうして、こんなことになってしまったのでしょうか。
「トーニ、お前は今日限りで、この村から追放する」
私は少し離れたところから、彼が追放されるのをただ黙って眺めていました。
後悔?
いや、後悔なんてしようはずがないです。
私は、彼を追放しようと、村のために幼馴染を切り捨てようと言い出した人間ですから。
私に、後悔する権利なんて存在しません。
歓喜?
そんなこと、思うはずありません。
私だって、できればこんなことしたくなかっのです。
そう、仕方のないことだったのです。
魔族との戦争により税金の負担は増えるばかり、ここみたいな極貧の小さな村が生き残るのには仕方のない選択肢だったのです。
働きもしないごく潰しを養う余裕なんて、みじんもないのです。
本当に、どうしてこんなことになってしまったのでしょう。
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ー過去ー
昔、まだ私も彼も幼かったころ。
私たちは、毎日のように一緒に遊んでいました。
彼は何でもできる、天才でした。
子供たちの中で一番足が速くて、力が強くて、頭がよくて、魔法が使えて……
本当に天才でした。
私はそんな彼にあこがれて、恋をしていました。
そして彼が魔法学院に行くと聞いた時、私は寂しさを感じつつも自分のことのように喜び、彼を送り出しました。
でも……
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ー村ー
「大丈夫か?」
悩みこんでいたせいで、心配させてしまったのでしょうか。
ベスタさんが私の肩に腕を回して、そっと耳元でささやきました。
「あなた、心配かけてすいません。大丈夫です」
「そうか」
不安に思っているのがばれてしまったのでしょう、ベスタさんは私をぎゅっと強く抱きしめてくれました。
あ、
たくましい腕に、強く抱きしめられて……ちょっと濡れてしまったかもしれません。
幼馴染が村から追放される。
そんな現状に、さっきまで悩んでいたはずなのに、私は……
私はひどい女でしょうか?
きっと彼から見たら、私はひどい女に見えるんでしょうね。
私だけじゃなく、ベスタさんのこともひどい男だと思ってるかもしれないですね。
でも、私たち以上にあなたはひどい人間なんですよ。
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ー過去ー
彼を魔法学院に送り出すということがどういうことか、当時幼かった私はその意味をあまりよく理解できていませんでした。
生きていくことが精いっぱい、そんな村にとって魔法学院の学費、王都での生活費、その負担はすさまじく重いものだったのです。
これまで通り、村の畑でとれたものを行商に売っているだけでは、その費用を捻出することなんて不可能なのです。
それでも、彼を学園に送り出したのは、天才だったからでしょう。
1人の天才が村の生活を一変させる。
そんなこと、ありふれたとは言いませんが、たまにあるお話です。
今代の勇者が生まれた村は、少し前まで私たちと同じような極貧状態だったそうですが、今ではそれとは比べ物にならないほど豊かな生活をしていると聞きました。
だから、無理をしてでも彼を学園に通わせることにしたのです。
無理とは何をしたのか?
当時何も知らなかった私は、村長に連れられるまま隣街に行きました。
ほかにも、数人の女性たちが同席してました。
初めての街に感激し、あたりをきょろきょろと見回しながら村長たちについていくと、薄暗い路地裏に入っていきました。
そこには、きれいに仕立てられた黒い服を着た男性が立っていました。
「よろしくお願いします」
「なかなかよさそうな子たちだ。あの程度の借金、一月かからずに稼げるさ」
村長は頭を下げ、私たちは男に連れられるまま……
そして……
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ー村ー
「誰か!! 助けてくれ!!」
彼の声が聞こえました。
考えていたことも合わさって、ビクリと大きく体が震えてしまいます。
ベスタさんがより強く抱きしめてくれて……ああ、安心します。
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ー過去ー
ベスタさんは、あの時街から一月ぶりに帰ってきた私を、同じように強く抱きしめてくれたのです。
そして、そのまま彼を誘ってしまいました。
一月もあんな場所にいたのです。
そうなってしまったのは、仕方のないことでした。
そして仮にもプロだった私に誘われて、断れるはずがありません。
私は、そのまま彼の背中に腕を回してキスをしました。
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ー村ー
同じです。
私は、彼の背中に腕を回してキスをします。
やっぱり、私はひどい女かもしれません。
彼の追放なんて、初めからどうでもよかったのかもしれません。
ただ、昔を思い出して。
昔のきれいで純粋だったころの私を思い出して、どうしてこうなったのかとそう思っていただけだったのかもしれません。
私はずっと引きずっていた自分の過去と、やっと決別できた気がします。
彼の追放と一緒に、決別できました。
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ー村ー
彼の追放から1日、いつも通りの日常が流れています。
元からずっとひきこもっていて、いても居なくても変わらないような人でしたからね。
「ねぇ、ママ見て見て。じゃぁーん、スライム!」
ショックな出来事を見せないようにと、昨日家に閉じ込めてた反動でしょうか?
朝早く家を出た息子は、スライムを捕まえて見せに来ました。
「あんまり触っていると、手が痛くなっちゃいますよ」
そういいながらスライムをつかんで、そっと地面に置きます。
あら?
少ししか触れていないのに、指の先が少し赤くなっています。
強い毒でも持っていたのかと慌てて息子の手を見ると、手のひらの一部が赤くなっているだけでした。
どうやら、普通のスライムのようです。
どうしてかしら?
少し思考に沈みそうになりましたが、
「ママ、目にゴミが入って取れないの」
「どれどれ、見せてください」
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