第42話、悪牙早輪螺処刀

「……コマ。コーマー」

「いい加減にせよミャオウ! 貴様には四天王としての自覚がないのかっ!」

「……マオウうるさい! コマ、あそぼ」


 北国調査の功績として少々甘く見ていたが、戻ってくるなり毎日のように遊ぶか邪魔ばかり。ビッチの奴が手を焼いていたが、流石にそろそろ看過できないレベルだ。


「魔王様。私は別に――――」

「黙っておれ」

「失礼致しました。出過ぎたことを申しまして、大変申し訳ございません」

「……コマ、わるくない。なんであやまる?」

「私は魔王様の小間使い。主の命令を聞かない部下などいないからです」

「あんなよわいやつのいうこと、きくひつようない」

「ほう? ミャオウよ。余が弱いと申すか?」

「……マオウ、シリアスにまけた。よわい」

「坊ちゃん!」

「構わぬ。続けよ」

「……ヨのほうがつよい。ヨがいたら、ぜったいかってた」


 留守中の出来事を話したのは、恐らく配下の魔物といったところか。出発前より生意気度が五割増しになっている気がしたが、どうやら勘違いではなかったらしいな。


「……さいきんゆうしゃがこなくなったのも、ヨにびびってるから」

「表に出よミャオウ。その強いという貴様の実力、見せてもらおうではないか」

「……のぞむところ」


 冥府狩りによる死神の力でどの程度強化されたか、試すには丁度いいだろう。

 城の外へ出たミャオウは、小さな暗黒空間から塊を生み出した。


「……威王刀いおうとう!」


 それを見た余もまた、四十七剣の一振りである十凶刀とうきょうとうを手に取る。

 しかし相手の攻撃を受けるだけに止め、真の力を発揮させるための詠唱はしない。


「どうしたミャオウ? 貴様の力はその程度か?」

「……しんか!」


 ミャオウが手にしていた威王刀いおうとうが闇に包まれる。

 一回り大きくなった二振りの刀が出現するなり、新たな斬撃が放たれた。




「……悪牙早輪螺処刀おがさわらしょとう!」




「小笠原諸島は、東京都特別区の南南東約1000kmの太平洋上にある30余の島々。総面積は104平方キロメートルあり、民間人が居住するのは父島・母島の2島。自衛隊などの公務員が常駐する島としては父島・硫黄島・南鳥島で、それ以外の島は無人島となっている。『東洋のガラパゴス』とも呼ばれるほど貴重な動植物が多いが、人間が持ち込んだ生物や島の開発などが原因でいくつかの固有種は絶滅の危機に瀕している…………などと叫ぶと思ったか?」

「……!?」

「想像以上には強くなっていたらしいが、貴様の悪牙早輪螺処刀おがさわらしょとうは、所詮余の十凶刀とうきょうとうの一部に過ぎぬ。今度はこちらの番だな」

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