第36話、フランベ
「……コマ。あそぼ。あそぼ」
「申し訳ありません坊ちゃん。本日は少々立て込んでおりますので、最低限の業務が終わった後でも宜しいでしょうか?」
「……どれくらい?」
昼食を食べ終えたミャオウが、コマのスカートの裾を引っ張る。
何十枚もの皿を重ねて運んでいたコマは、器用にバランスを取って頭を下げつつ答えた。
「そうですね。一時間ほどお待ちになっていただく形になるかと」
「……やだ。いまあそぶ」
余の遺伝子を元に生み出されたにも拘わらず、コイツは随分と我儘だ。恐らくビッチがミャオウを生成する際、何かしら不純物でも入りこんだに違いない。
「坊ちゃん。そんなに引っ張られるとスカートが破けてしまいます」
「……やーだー。やーだー」
「いいかげんにせよミャオウ。貴様も四天王なら四天王らしく、他の魔物に示しが付くような立ち振る舞いを身につけたら――――」
「……マオウうるさい」
どうやら少しばかり痛い目を見た方が良さそうだ。
聞き分けのない四天王にげんこつの一発でもくれてやろうと立ちあがる。
「……コーマー。コーーーマーーー」
「坊ちゃん。魔王様に対してその言葉遣いはいけませんよ」
「……あそぼー。あーーそ――――」
「フランベ!」
余が引き剥がすよりも先に、コマの技がミャオウに炸裂した。
小さな身体が大きな炎に突然包まれたが、ジュオオオという音と共に燃え上がっていた炎は一瞬にして鎮火。まるで手品のような技で、ミャオウはポカーンとしている。
「坊ちゃん。魔王様に言うことがありますね?」
「……ごめんなさい」
「はい。よくできました。私の業務が終わるまで、お待ちいただけますか?」
「……わかった」
先程までの我儘っぷりが嘘のように、ミャオウはトテトテと外へ走り出した。
アルコール分ではない何かを飛ばす技フランベ……恐ろしい技だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます