第35話、円月刀
「……コマ。あそぼ。あそぼ」
「はい。何をなさいましょうか」
北国調査から戻ってきたミャオウが、コマのスカートの裾を引っ張る。
余の遺伝子を元に生み出されたにも拘わらず、コイツはコマが大好きだ。恐らくビッチがミャオウを生成する際、何かしら不純物でも入りこんだに違いない。
「……かくれんぼ」
「それでは私が鬼をやりますので、坊ちゃんはお隠れになってください」
「……うん」
言うが速いか、トテトテ走り出す四天王。力だけなら充分なんだが、こうした情けない姿を見せられるとスイーツとは別の意味で困り者であり頭を抱えたくなる。
「かくれんぼが終わったら、鬼の説教をする必要がありそうだな」
「坊ちゃんはまだ子供ですから、少しくらい遊んでも良いではないですか」
「子供でも四天王。遊んでばかりでは…………む……」
「如何なされました?」
「近海に賊が現れたようだ。留守は預けたぞ」
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」
今回の結界はビッチも相当力を入れたらしく、広範囲まで探知する機能付き。敵の侵入を以前より防ぐだけじゃなく、近づいてきた段階から警戒できる訳だ。
「む……?」
海岸へ向かうと、そこには先客がいた。
賊が乗っていると思わしき大きな船が近づいてくる中、ミャオウは両手を上げると小さな暗黒空間から生み出した塊を容赦なく振り下ろした。
「……
「高嶋は和歌山県西牟婁郡白浜町の臨海浦に浮かぶ島。島の大きさは南北130m、東西35m、高さ25m。直径9mほどの円月形の穴が開いていることから、通称円月島と呼ばれている。国の名勝に指定されており、春分・秋分の時期には中心部の穴を通して夕日が見えるううう!」
前回に比べれば随分短い断末魔を叫びながら、船は盛大に爆発四散する。
大きく溜息を吐くミャオウに対し、余は気付かれないうちに引き返すのだった。
「まあ、今日のところは大目に見ておくか」
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