第34話、威王刀

「たっだいま~。オーちゃんお久~。元気してた~?」

「我が主よっ! 四天王が一人、悪魔剣士ヒル! 北国の報告に参りましたっ!」


 転生者の出没点と思わしき北国へ向かわせていた四天王二人が、スイーツのワープクーヘンによって帰還。そして二人の間には、髭の生えた子供がムッとした顔で立っていた。


「うむ。ヒルにスイーツ……そしてミャオウよ。ご苦労だったな」


 この猫のような子供こそ、元々北国へ行かせていた四天王の一人。ビッチが余の遺伝子を元に生み出した影武者……にする筈が、どこからどう見ても魔王の代役はできそうにないため四天王の座につかせたミャオウだ。


「あっ! コマちゃん見っけ! お久~、元気してた~?」

「お帰りなさいませスイーツ様。お元気そうで何よりでございます」

「相変わらずお堅いね~。はい、これお土産。美味しいお酒に合うよ~」


 余は貰っていない北国名物らしき美味しそうなつまみをコマに差し出すスイーツを放置し、一緒にいて大変だったであろうヒルから話を聞く。


「――――といった感じで、我が主の仰る転生者らしき気配は窺えませんでした」

「そうか。ミャオウ、お前は見なかったか?」

「……ヨはしらない」

「わかった。では北国の件はヒルに任せよう。ミャオウは暫く休むがいい」

「はっ! 我が主のご期待に応えてみせますっ!」


 深々と頭を下げつつワープクーヘンから転移するヒル。北国でなければ残りは東国ということになるが、こっちはスイーツの奴に調べさせるか。


「……テキがきたようだ」

「そのようだな」


 流石は余の遺伝子を受け継いだ四天王といったところか。

 賊と思わしき相手が玉座の間へ足を踏み入れた瞬間、ミャオウは一言も話を聞かずに小さな暗黒空間から生み出した塊を容赦なく振り下ろした。






「……威王刀いおうとう!」






「硫黄島は小笠原諸島の南端近くに所在する東西8km、南北4kmの島。行政区分上は東京都小笠原村に属し、小笠原諸島の行政府が置かれている父島からは南南東へ300km。本州、グアム島、南鳥島、沖縄本島から、それぞれ1200kmから1300km程度の等距離に位置する。歴史的呼称として硫黄島いおうじまの別称もあるが、現在は鹿児島県にある硫黄島いおうじまと区別する形で硫黄島いおうとうと統一。硫黄島の北方約75kmには北硫黄島、南方約58kmには南硫黄島があり、この3島で硫黄列島と呼ばれる火山列島を構成。地熱が高く島の至る所で噴気が有り、噴出する二酸化硫黄等の火山性ガスにより特有の臭いが立ち込めている。第二次世界大戦において硫黄島の戦いと呼ばれる激戦地となったことから、小説や映画など多くの作品で採りあげられている。交通困難地の指定を受けており住所を記載しても郵便物は届かないいいい!」


 四十七剣より長い断末魔を叫びながら、賊の身体は爆発四散する。

 ドヤ顔を見せるミャオウに対し、余は大きく息を吐いた後で呟くのだった。






「効果が発動するまでの持続時間が長すぎる。それに爆発四散すると城が汚れコマが不機嫌になる。威力だけは充分だが、まだまだだな」

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