第32話、表氷雹兵豹剣
「…………む。ここが冥府か」
気付いた時には紫色をした空の下、生命を感じない荒地に一人佇んでいた。
魔王城から離れていた間に余の取った行動。それは第二、第三の反逆のシリアスのような存在が現れた時に備えて、より一層強くなることだった。
その中の一つが、死神との契約。
『冥府の怪物を狩る毎に、死神の力を分け与えてやるデス』
――――という話を経て、今後は余の望んだタイミングで怪物狩りへ。冥府への移動は寝ている間、夢の中から転移するため部下達に知られることもない。
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオ!」
「どうやら早速現れたようだな」
目の前に突如現れたのは、燃える豹のような生物。全身を陰に包まれたように真っ黒になっている辺りから、死神の言っていた怪物に違いないだろう。
「ヴァアアアアアアアアアアア!」
「余に牙を向けるとは愚かな獣よ。出でよ四十七剣! 今宵選ばれし剣は、炎の豹ならぬ氷の豹を生み出す剣だ!」
詠唱によって生じた暗黒空間に『氷』『豹』という言霊が吸い込まれる。
闇から生まれ掌に収まった武器は、尻尾を垂らす豹のような武骨な形の物体。剣というよりハンマーに近い四十七剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
「兵庫県は日本の近畿地方に位置する県。県庁所在地は神戸市。東経135度の日本標準時子午線が南北に通過し、明石市にはこれに因む明石市立天文科学館がある。溜池、古墳の数が日本一で、遺跡の数は二位。県の木はクスノキ。県の花はノジギク。県の鳥はコウノトリいいいいい!」
唸り声から一転して流暢な断末魔を叫びながら、怪物の身体は消滅する。
静寂に包まれた冥府の中で、余は呆然としつつ呟くのだった。
「冥府の怪物さえ喋らせる我が奥義……流石だな……」
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