第28話、困
「これはこれは、いらっしゃいませ。いつも御贔屓にしていただきありがとうございます。今日は魔王様も不在ですので、貴方様と話しても問題ないでしょう」
「少々散らかっておりまして、大変申し訳ありません。実は先日……と、失礼致しました。我々を見守ってくださっている貴方様に、反逆のシリアス襲来の説明は不要でしたね」
「ええ。ルル様のお力添えもありまして、無事にシリアスは追い返すことができました。こちらの被害も相当なものとなりましたが……勿論、魔王城の話でございます」
「外観は体裁を保っておりますが、中は目も当てられませんね。戦場となった時点で覚悟は決めておりましたが、ここまで散らかされては毎日が大忙しです」
「魔王様の戦闘がどれだけスマートだったか、実によくわかりますね。ルル様に内側にも結界を張っていただくようお願いしたので、今度は悩まされることもないでしょう」
「…………と、つい私の愚痴ばかり話してしまいましたね。こうして貴方様とお話できる機会が貴重ですので、柄にもなく饒舌になってしまい大変失礼致しました」
「それで、本日のご用件は……聞くまでもありませんね。いつも通り、魔王様を見に来てくださったと。お心遣いありがとうございます。そして誠に申し訳ございません」
「先程も申し上げましたが、生憎と魔王様は現在留守にしておりまして……詳細につきましては、こちらの置き手紙をご覧いただいた方が早いと思われます」
『しばし留守を預ける』
「どこに行かれたのか……ですか。本当、どこをほっつき歩いていらっしゃるんでしょうね。今回は私も聞かされておりません」
「魔王様にも困ったものです。私に四十七剣を見られたくらいで、何も姿を眩ませるほどにまで落ち込まずとも良いと思いませんか? 幻滅なんてする訳もないのに」
「そもそもシリアスの話に耳を傾けず、今まで通りで良かったんです。私も貴方様同様、ワンパターンな四十七剣が大好きだったんですが……おや? どうなされました?」
「ええ。私が四十七剣を見たのは今回が初めてじゃありませんが、お話していませんでしたか…………って、そんなに驚かれることでしょうか?」
「私は魔王様の小間使い。お傍にいれば、否が応でも魔王様が戦っている姿など目に入ってしまうものです。当人はそんなことも知らず、無駄に新技を作ろうとしてましたが」
「少々話が逸れてしまいましたね。魔王様の件ですが、御心配なさらずとも気持ちが落ち着いたら戻られるでしょう。約束は守るお方ですから」
「もう暫くすれば城内も片付きますので、またその時には是非お越しくださいませ。本日できなかった分も合わせて、最高のお茶をご用意しておもてなし致しますよ」
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