第16話、ババロガ

「あ~、やっと静かになった~。あんなに沢山いたのに一瞬で全部やっつけちゃうなんて、流石オーちゃん! かぁっくい~っ!」

「いくら集まろうと所詮蝿は蝿。あの程度、造作もない話だ。本当に恰好良いと思っているなら、オーちゃんではなく魔王様とちゃんと呼べ」

「でもいいな~。アタシもオーちゃんみたいな必殺技欲し~」

「貴様にはカロリーマジックがあるではないか」

「でもでも~、アタシのカロリーマジックって単体攻撃ばっかりで全体攻撃ってないし~。オーちゃんみたいな必殺技があったら、船団を見つけた時点でボッコボコに――――」


『――――うおおおおおおおおお!』


「騒々しいな。コマよ、何事だ?」

「墜落した飛行船団の残党が数名、城に突入してきたようですね」

「はいは~い! 数名ならアタシがやる~」


 リングドーナツを食べていた四天王の少女が元気よく手を挙げると同時に、三人の男が玉座の間へ駆けこんでくる。この人数ならスイーツでも問題なく対処できるだろう。


「何にしよっかな~っと。決~めた! ババロア!」


 スイーツの掌から、大きな平べったい光弾が放たれる。

 先頭を走っていた男に命中した途端、衣服を含めた身体が一瞬にしてゼラチン質のプルンとした物に変化。容器となった光弾の上にグチャっと音を立てて落下した。


「ババロラ!」


 ギョっとしていた二人目の男に光弾が当たると、何の華やかさもなかった先程とは異なり、ゼリーのように象られた状態で容器の上へと乗せられる。


「ババロガ!」


 最後の一人に至っては綺麗なリング状の形となり、その中には色鮮やかな季節のフルーツが盛り沢山。見ているだけで涎が出そうな、特大スイーツが完成した。


「ババロラはオーちゃんとコマちゃんにあげる! ババロガはアタシのだから、絶対に食べちゃ駄目だかんね! 食べたらマジおこだよ!」


 そう言うなり、スイーツは配下の魔物達へババロアを配りに出掛ける。

 コマが紅茶の用意を始める中、余はババロラを眺めつつ小さく溜息を吐くのだった。




「アイツの技だけはいらぬな」

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