第15話、四六剣
「そこまで。記録は……これまでの最高記録だった55本を大きく上回る、74本ですね。魔王様。一分間片手鉛筆立てギネス達成、おめでとうございます」
「随分と苦労したが、ようやく納得がいく結果を出せたな。コマよ、記念に写真を――――」
『ドゴォォォォオン』(大きな振動)
『カタッ……カタカタカタカタカタカタカタ――――』(無情にも倒れていく鉛筆)
「オーちゃん! 大変大変~っ! 空に敵がウジャウジャいるよ~っ!」
「確認しました。どうやら飛行船団による空襲のようです」
「…………切り札を失った南国が、最後の特攻を仕掛けてきた……といったところか。余がいいと言うまで、魔王城から決して外へ出ないよう指示を出しておけ」
「承知致しました。行ってらっしゃいませ」
「気を付けてね~」
「さて、どうするか」
魔王城の屋上で、遥か上空から爆弾を投下してくる数十の飛空挺を見上げる。
四十七剣を使えば奴らを片付けるのは造作もない話だが、城内待機の指示を出したとはいえ部下達が見聞きしてしまうかもしれない。誰一人として知らない主の奥義となれば、こっそり確認しようとする輩だっている可能性はある。
「…………試してみるか」
投下された爆弾が屋上に降り注ぐ。
視界が遮られる程の爆煙が生じ、見られる心配がなくなったところで空へ手を掲げた。
「今宵選ばれし剣は、いつまでも数で攻め込むしか能のない貴様らへの引導だ」
詠唱によって生じた暗黒空間に『数』という言霊が吸い込まれる。
闇から生まれ掌に収まった武器は、靴のような武骨な形の物体。剣というより鈍器に近い四十七剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
『…………』
「………………」
『……………………』
「…………………………駄目か?」
生成された四十七剣をチラリと見た後で、静かに周囲へ耳を傾ける。
大きな爆発音が響き渡ったのは、爆煙が消え始めた時だった。
『山口県は日本の中国地方かつ本州最西端に位置する県。県庁所在地は山口市だが、最大の都市は県西端に位置する下関市。八地方区分では中国地方に区分されるが、九州・山口地方と称される場合もある。画数は全都道府県中最も少ない6画で、県魚に指定されているフグは日本一の市場取扱量。出身総理大臣の通算の在任期間が全国最長であり、初代総理大臣の伊藤博文をはじめ人数は全国最多の八人。県の木はアカマツ。県の花は夏みかんの花。県の鳥はナベヅルううううう!』
次々と爆発音が響き渡る中、墜落していく飛行船から断末魔が微かに聞こえる。
騒がしい城の上で、余は握り締めていた
「覚えておくがいい。これが余の四十七剣だ」
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