第13話、二九一剣
「たっだいま~。オーちゃんお久~。元気してた~?」
「オーちゃんではなく魔王様と呼ぶように言っているだろう」
馴れ馴れしく話しかけてきたのは、派手派手な露出の多い服を着たギャルっぽい女。ツインドリルの金髪を弄りつつ聞こえない振りをするコイツは、ヒルと並ぶ四天王の一人だ。
「スイーツよ。南国の制圧はどうなってる?」
「あ~無理無理。あそこの騎士団の連中ってアタシの好みには合わないわ~。あっ! コマちゃん見っけ! お久~、元気してた~?」
「お帰りなさいませスイーツ様。こちらは変わりありません」
「相変わらずお堅いね~。はい、これお土産。美味しいお茶に合うよ~」
余は貰っていない南国名物らしき美味しそうな茶菓子をコマに差し出すスイーツ。コイツは自分の使命をちゃんと理解しているんだろうか。
「あ、そ~そ~。南国の人達、物凄い大船団で攻めてくる準備してたよ~。直通のゲートをそこに繋いでおいたから、今のうちに潰しておくかどうかはオーちゃんにお任せ~」
「そうか。わかった。留守は預けたぞ」
「はいは~い。行ってら~」
スイーツが生成した、樹木の年輪のようなリング状に開かれたゲートをくぐる。
転移した先は見晴らしの良い塔の上。そして見下ろした先には無数の船が停泊していた。
「百……二百……三百近くといったところか。余に刃向かう愚か者共め。今宵選ばれし剣は、数で攻め込もうとする貴様らにおあつらえ向きな剣となるようだ」
詠唱によって生じた暗黒空間に『数』という言霊が吸い込まれる。
闇から生まれ掌に収まった武器は、鍵のような武骨な形の物体。剣というより斧に近い四十七剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
『福井県は日本の中部地方に位置する県。県庁所在地は福井市。眼鏡産業において全国生産の90%以上を生産しており、楽器のハープは国内唯一の生産地。また日本の恐竜化石のほとんどが産出されている。県の木は松。県の花は水仙。県の鳥はつぐみ。県の魚は越前蟹いいいいい!』
どこからともなく聞こえてきた断末魔の合唱と共に、大船団は海の底へと沈んでいく。
静寂に包まれた塔の上で、余は久々の外界を眺めつつ呟くのだった。
「目撃者は……うむ、おらぬな」
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