第12話、光輝魔右手

「魔王様。外出なさるのですか?」

「うむ。ついに禁断の石板の解読が終わったらしいのでな。留守は預けたぞ」

「鼠一匹たりとも通しません。行ってらっしゃいませ」




「クックック……これはこれは魔王殿。この深淵の魔法使い、ルルルールル・ルルルルルヴィッチことルルの管理する魔術工房へお越しいただきありがとうございまするる」

「ビッチよ。騎士達にやられた身体はすっかり回復したようだな」

「その件に関しましては面目ないでするる。この魔王城の門番、ルルルールル・ルルルルルヴィッチことルルが不覚を取るとは、南国には強者が多いようでするる」

「せいぜい油断せぬことだ。それで、例の石板は?」

「こちらでございまするる」




 力を求めし闇の者よ。

 汝が欲するであろう禁断の業を、この石板に記す。

 悪夢の国より生まれし刃波は、全ての存在を消滅させるであろう。

 邪神ドルナドの力に値するならば、この呪文を唱えてみるがいい。

『光輝魔右手』……と。




「………………」

「ささ、魔王殿。あちらに実験用のメタル勇者を用意しておきましたるる。悪夢の国の力を、このルルルールル・ルルルルルヴィッチことルルにお見せくださいませるる」

「…………ならぬ」

「へ?」

「この禁断の業は、決して唱えてはならぬ。よいな?」

「な、何を仰るのですか魔王殿? この禁断の石板の専門家、ルルルールル・ルルルルルヴィッチことルルが解読した光輝魔みっきーま――――」

「口にするでないっ!」

「!?」

「余は理解した。これは敵だけではなく、唱えた術者も、そしてその世界すらも消滅させかねない禁忌。まさに石板に記されている通り、全ての存在を無へと帰す災厄だ」

「な……なんと、そこまでだったとは……しかし唱える前に見抜くとは、流石です魔王殿」

「このことは忘れよ。余はこれを誰の目にも止まらぬよう封印してくる」




 光輝魔右手……まさか著作剣とは、邪神ドルナドもやってくれるわ。

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